いち麦

ミッシングのいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

愛娘が失踪し世間の風当たりにおかしくなっていく母親・沙織里(石原さとみ)と、妻を支え思いやりながらも冷静でいようとする夫(青木崇高)のやり取りがとても自然で、2人に同情や共感を抱かずにいられない。街頭で思わず夫が零す涙は、妻への深い理解とも受け止められた。姉弟の和解にも安堵した。被害者家族が外圧から崩壊していくことも少なくないが、この家族はこれで寧ろ絆が強くなるのではないかと胸を撫で下ろす…事件は解決していないものの人間ドラマとして麗しい着地だった。

マスメディアが謳う「事実を報道する正義」は事件の被害者救済とは決して相容れない。手段として理解しながらも報道に頼らざるを得ない被害者側の弱みに付け込むマスメディアの持つ体質的な嫌らしさ。もはや一記者の配慮だけではどうにもならない。そして、被害者に対するSNSでの脅迫、誹謗中傷、直接的な悪戯など現代人の嫌な面がまたしても映し出される。背景ではあるが会話もしっかり届く他人同士の諍いも不快さを助長する演出か。でもその一方で心ある人たちも何人も描かれていて救われる思いがした。

バランスのとれた優れた脚本。俳優勢のキャスティングも演技も素晴らしい。石原さとみの嵌り様はハンパない。彼女の熱演に拍手を送りたい。秀作。
いち麦

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