富樫鉄火

遠い一本の道の富樫鉄火のレビュー・感想・評価

遠い一本の道(1977年製作の映画)
4.0
#191 ラピュタ25周年ニュープリント大会
国労のプロパガンダ映画だが、それを割り引いても、たいへん興味深い映画だった。
ドキュメントとフィクションを交錯させる演出が、なかなかうまい。
主人公を運転士(動労)ではなく、保線工夫(国労)にしたところも、ほかの鉄道映画とちがって、よかった。
冒頭、ひさびさに着物を着た設定の左幸子が、裾を端折って線路をまたぐシーンがあるが、その動きで、これがどういう映画か、一瞬でわかる。
左幸子は、女優としても監督としても、やはりすごい女性だった。
明らかに『にっぽん昆虫記』『飢餓海峡』『軍旗はためく下に』などがあって、この作品にたどり着いたことがよくわかる。
長回しが多いが、役者がちゃんと動いているので、まったく飽きない。
ラスト、土砂災害復旧シーンから軍艦島までの畳み込むような流れの演出もうまい。
初めて乗った新幹線で「ひかりは西へ」のキャッチフレーズの、その先に廃墟となった軍艦島があるとの設定は、(脚本の宮本研のアイディアかもしれないが)あまりに見事で、うなった。
本作は、フィルムが逸失していたのを、かつてラピュタが苦労してネガを探し出し、ニュープリントで焼いた作品である。
もっと評価されていい力作だと思う。
富樫鉄火

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