ビンさん

風よ あらしよ 劇場版のビンさんのレビュー・感想・評価

風よ あらしよ 劇場版(2023年製作の映画)
3.0
元々はNHKBSでオンエアされたドラマだったのかな、それを劇場公開に再編集した作品、でいいのかな。

その出自はともかく、個人的に以前から甘粕正彦氏に興味を持ち、いろいろ書物なども読んだ。
甘粕氏を語る上で切り離せないのが、本作のヒロイン伊藤野枝。
関東大震災の折、憲兵だった甘粕氏が、伊藤野枝とアナーキストの大杉栄らを連行し処刑、遺体を井戸に放り込んだという、いわゆる甘粕事件の当事者である甘粕氏。

事件後、太平洋戦争のさなか、満洲へ渡り、満洲映画協会の理事長を努めた。
このあたりのことは、『ラストエンペラー』で甘粕氏を坂本龍一さんが演じて話題となった。

それはさておき、本作は甘粕氏に殺害された伊藤野枝、彼女の姿を追った力作である。

明治、大正と、当時では斬新だった女性の立場の自由性、平等性を謳った伊藤野枝と、大杉栄との出合い、そして悲劇にいたるまでを、吉高由里子が熱演。
当時としては斬新だった彼女の生き様が、吉高由里子本人が醸し出すカラーと見事にマッチしていたように感じた。

また、永山瑛太演じる大杉栄のいい加減さ(笑)もよく出ていた。
ユニークなのは、オンエア中の大河ドラマ『光る君へ』では吉高由里子の宿敵にあたる人物を好演している玉置玲央が、既にこのドラマで共演していた事に驚く。

ただ、音尾琢真演じる甘粕大尉の登場時間がかなり短い。
まぁ、伊藤野枝が主人公なんだから仕方ないとはいえ、ね。
やっぱり喰い足らない印象が残る。
イメージとしては、容姿はご本人に似せてあったようだ。
坂本龍一の甘粕大尉は全然イメージ違ったからなぁ。
フジテレビで過去にオンエアされた、李香蘭のドラマで片岡鶴太郎さんが甘粕大尉を演じたけど、あの時がもっともイメージが合っていたように思う。

ともかく、大正の時代に、先進的な思想を持った女性がいた、ということを知るにはわかりやすい内容だったと感じた。

冒頭とラストを、井戸の底からの野枝の視線というのも、凝った演出だった。
ビンさん

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