techno

ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだのtechnoのレビュー・感想・評価

3.1
2024.5.05
『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』“早稲田の杜”特別先行上映&シンポジウム の感想

代島監督作品との出会いは鴻上氏の雑誌連載で紹介されていた成田闘争の関係者をドキュメントした『三里塚のイカロス』であった。続いて学生vs機動隊(国家)を描いた『きみが死んだあとで』。本作は、それから三作目の学生運動(内ゲバ)を主題にした作品といえる。

いわゆる全共闘運動が、学生活動家vs機動隊・公団(国家)から学生活動家vs学生活動家(内ゲバ)の流れだけでなく、内ゲバ以前に、ある活動家一派(過激派)に占拠された大学を独裁的なものから取り戻す行動を起こした学生グループが存在し、ある過激派の学園支配に非暴力として抗う流れがあったことを本作では明らかにしている。そして大学当局が過激派の暴力的学園支配を黙認しているような流れもあったのではないかとも感ぜられる。まるで1981年公開の『ねらわれた学園』のようだ。

上映前のシンポジウムでは、過激派が大学自治会?を牛耳る根拠は大学から拠出される自治会費?と学祭パンフレットの売上?を活動(運営)資金にするためであり、彼は早稲田で死んだのではなく、早稲田(大学)に殺されたのだと指摘する意見もあった。

当時を学生であり、内ゲバで友人を亡くしている内田樹氏の大義名分や正義の保証のもと躊躇なく他者に暴力を行使できる普通の学生(人間)の存在を指摘するコメントは、映画を観ている観客への問い掛けでもあるのでは...

蛇足だが前作『きみが死んだあとで』は『誰がハマーショルドを殺したか』と映画の構造が似ている。
本作は寡聞な映画体験から推測するに『貌斬り KAOKIRI 戯曲「スタニスラフスキー探偵団」より』と似ている点があるとこじつけることもできる。

学生運動の映像を見て、何を騒いでいるのか不思議に感ぜられる世代にとっては、当時の状況を知ることのできる道標的な作品と言える。刺激的で印象深い映画体験が待っている。
techno

techno