むーん

ありふれた教室のむーんのネタバレレビュー・内容・結末

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

非常にドライブ感のある脚本で、サスペンスとしてはかなりスリリングで面白い。ゼロ・トレランス(不寛容)方式というものを寡聞にして知らなかったが、要するに生徒を律するための厳罰化という認識で良いですかね。まあこれに関しては日本でも少年犯罪が頻発する反動で歓迎されそうなシステムだとは思うが、本作ではそこに加えて『疑念』がひとつのテーマとなっている。0.999…と1は等しいと証明させる授業、全ての面の色を揃えることを最終目標とするルービックキューブ、神への信仰を捨てて天文学へと到った歴史--作中で取り上げられたそういった要素は、世界から『誤差』を排除するものだ。主人公が窃盗の犯人を明らかにするためにカメラを仕込んだのも、問題を起こした生徒を教室から外へと追い出すのも、逆に生徒たちが主人公を糾弾したのも、全ては『アルゴリズム(順序)』に従った誤差の排除に他ならない。学校は社会の縮図というフレーズはもはや一つのクリシェに過ぎないが、本作で表現された『誤差の排除』、ひいては世界の余剰を許さない余裕のなさは、現代社会におけるSNSの相互監視や隣人への無関心を彷彿とさせる。最近は『不適切にもほどがある!』『東京都同情塔』などの影響もあって「寛容さ」についてよく考えているけど、「疑わしきは罰せず」という精神はやはり大切なのではないかとひとつ気づきを得た。

てか、主人公がひたすら悪手打ちまくってたせいで、中盤で生徒の一人が「自業自得では?」って言った時に「マジでそれ!!!」って叫びそうになった。ただ、常時ストレスが爆発しそうなギリギリのところで堪えている(いや堪えきれてないか?)演技は絶妙で良かった。
あと、ラストは、画としては凄く良かったし、別に作中で全ての問題が解説する必要があるとも思わないんだけど、それでもちょっと物足りない感じはあったかな。オスカー以外との関係性を描いている物語でもあったわけだし。
むーん

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