藍紺

異人たちの藍紺のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.1
山田太一原作ではあるが、これはアンドリュー・ヘイの個人的要素で構築した作品になっていたように感じた。
クィアとして生きてきた監督の孤独に思いを馳せる。クィアの方の感想を観てたら、「とても打ちのめされた」とか、「結末に戦慄した」など壮絶なレビューが並ぶ。
この結末を希望ととるか絶望ととるかで作品への印象はガラリと変わるのだろう。孤独なのは自分だけじゃない、みんな孤独の中生きている。どん底にいる時は気付きにくいけど、人は身近な存在の孤独に嫌になるほど鈍感だ。ほんの少しだけ、他者に目を向けることが出来たなら……。

我がミューズ、ポール・メスカルもいいですが、やはり今作はアンドリュー・スコットの名演を存分に堪能するための映画。特に父ジェイミー・ベル、母クレア・フォイに挟まる息子アンドリュー・スコットに心が震えます。家族パートが良すぎて、恋愛パートがややインパクトが弱いと感じるほど(まあ、これは日本版もそうだから仕方がないか)。

薄暮を感じさせる色調や、夢か現実か分からないカット割りが儚さを一層引き立てていて良かった。
鑑賞後、『All Of Us Strangers』のタイトルがじわじわ来ますね。淋しさに打ちのめされてる隣人がいたら、孤独はそんなに悪いものじゃないよと言いたいなあ。孤独は打ち勝つものじゃなくて、心に住まわせて一緒に生きていくものだよね。
藍紺

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