コーディー

異人たちのコーディーのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.2
回想や妄想で紛らわすしかなかった心の均衡、癒えない孤独、過去にしこりを抱えるアダムが切望の果てに導かれる少年時代、そして今は亡き両親。
まるで数十年ぶりとは思えない在るがままの再会。現実かどうかより〝聞きたかったこと〟で高まり変容していく精神、慰めに照らされる生命に超泣いた。傑作!

11歳で亡くした両親との余りにも足りなかった時間を埋めるように、あの頃の恐れや悲しみ、同性愛者としての憂鬱も今ならばと受容れ、曝け出す…
そんなアダムが迎えるマジックアワーに更なる明かりを灯すハリーとの出会いが理屈を超えた共鳴、小さな愛を抱いて生き延びようとする者を優しく包んでいるようだった。

もちろん全ての憂鬱が晴れるわけではないし過去を無かったことにも出来ないけど、表だと思っていたものの裏側にある可能性、その温もりに触れた瞬間、幻想さえ現実を響かせる…
そんな物憂げな過去をループしてきたアダムに訪れる超自然的な機会、その中で変化する感情を繊細に表現するアンドリュー・スコットの演技に魅了された。
そして、そんなアダムと同じか、それ以上に孤独が伝わってくるハリーのか細く優しい表情や薄明かりに照らされる優美さ。
昨年の『アフターサン』に続き、今年もポール・メスカルに心くすぐられまくりでしたw

また屈託なくアダムと接しながらも、この機会と慎重に向き合おうとする両親の想い、クレア・フォイ&ジェイミー・ベルの情感溢れる演技も素晴らしかったし、4人の俳優が完璧でした。

あと予告でも流れるペット・ショップ・ボーイズの曲〝Always On My Mind〟使い所もズル過ぎる、あんなの泣くに決まってるw