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異人たちのMasterYuのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.2
ロンドンのタワーマンションに住む脚本家のアダムは、12歳の時に両親を交通事故で亡くして以来、孤独な人生を送っていたが、同じマンションに住むハリーと出会い親密になっていく。
そんなある日、ふと思い立って子供の頃過ごした郊外の家に電車に乗って訪れると、そこには亡くなった両親が当時の姿で暮らしていて・・・。

山田太一原作の「異人たちの夏」をベースにした作品。
「異人」というのは原作では「幽霊」を指していると思われますが、本作では「幽霊」だけではない広げた解釈になっているのは、本作の英題「All Of Us Strangers」から、また主人公をクィアにしていることからも分かります。

監督のアンドリュー・ヘイ、主演のアンドリュー・スコット自身、ゲイであることを表明しているので、その辺りの描写は特に丁寧なアプローチがなされているように感じられました。

子供の頃に両親を亡くし、自分がクィアであることを告げられなかったことによる心の中のしこり。
主人公アダムはそれ故により孤独な人生を送ることになってしまったと推測される中、亡くした両親に再び会うことにより、そのしこりが解きほぐされていく様を描いたストーリーだと解釈しました。

亡くなった両親と再会できた「Why?」は気にしないで観た方がいいファンタジー系ですが、パートナーとなったハリーとの最後のシーンとか観ると、結局その「Why?」の部分が気になってしまって困る。

舞台がロンドンに変わっていることによるノスタルジックな描写は、原作で得られる日本的なノスタルジーとは当然違うので、原作を知る人には残念な感覚であると思いますが、原作未読の人には特に問題はないのかな?

つまるところ多様性という現代的な部分を取り込み咀嚼した内容にしたことで、評価が高いのだと思いますが、このテンポで描き切ることが作品の美しさだと肯定するには、私の感性はまだその域にたどり着けていないということなのでしょう。
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