このレビューはネタバレを含みます
子どもたち全員を自分の自己実現のために圧倒的な支配力と狡猾で巧みな言葉で蹂躙していく父親。次々と起こる子供たち兄弟の不幸は全てこの親父のせいだと見えてくる。三男デヴィッドの病死さえも遠因は親父の教育方針が災いした心理的ストレスに依るものではないかと感じた。四男ケリー自死の経緯だって、きっと描写の省かれている親父とのやり取りが絡んでいたのだろうと想像する。信仰に感けて子どもたちを夫から一切救わなかった母親の不甲斐なさも痛恨。数々の不幸の連続を最早“呪われている”としか捉えられなくなってしまった子供たちの心が哀し過ぎる。
こういう家庭は地方のアメリカに多いのではないだろうか。自分の非を一切省みることのない視野の狭い親の因果応報を見ているようで辛かった。訴えかけてくるものが分かりやすく深く考えさせられる家族の人間ドラマ。レスリングに殆ど興味のない自分が見てもどっぷりと入り込める作品だった。
字幕は稲田嵯裕里氏。