YURINA

52ヘルツのクジラたちのYURINAのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.0
杉咲花さんの演技が素晴らしくて圧巻。時系列の中での演じ分けもよかった。

原作読みながら思い浮かべていた風景が素敵に可視化されて嬉しかった。

全体的に非常に良かったんだけど、カメラワークとの相性が悪くて、今動かないでほしいな、くどいなと思う場面がややあったのと、手ブレ?動きが多くて見ていて後半疲れてしまったのでそのあたりがかなり惜しかった。

アンさんの行動原理が分かりづらく(というか後半まで伏せられており)、結果的にミステリ仕立てになっていて非常に面白いな〜と思ったのに、公式サイトにトランスジェンダー男性と表記があって、先に言っていいやつだったんだ?と解釈違い起こして暴れている。物語の後半で明かされてこそ面白みのある設定ではないのか?

原作から変わった箇所があり、どういった意図で?と気になってしまうけれど、原作未読の層からの評価もいいようなのであまり考えずに見ればよかった。アンさん、原作ではふっくらした優しそうな人だったと思うのでどういった解釈で志尊淳を?と思ったけれど、高校時代の写真のあの感じのイメージなんだろうなと思った。
琴美の祖父母の存在が登場しなかったのは尺の問題だろうけれど、それによって虐待する側の琴美のキャラクター性も、血縁がないきなこと愛が社会で一緒に生きていくことができるのかという議論も深く描かれるので、このあたりは原作小説の描写の方が好き。

アンさん、作中では優しい人だとは思うけれど、きなこを異性愛者と決めつけ話さなかったので、形が違えば優しくない人だったかもしれない。優しくなくてもいいから死なないでほしかったなとも思う。

> どうやって話したらいいかすごく迷っているんですが……本作では、安吾がトランス男性であることを種明かし的に描く構造にはするべきではないと思っていました。だから、それを宣伝で明かすかについては監督やプロデューサー、宣伝部をはじめとする制作の中心に携わる方々と何度も議論を重ねました。人のアイデンティティは、物語を盛り上げるために消費する「ネタ」ではないのではないかと。だからこそ、時として言われるような「ネタバレ」として扱ってしまうことを見つめ直したい気持ちがあって。
https://www.cinra.net/article/202403-52hz_iktay

アンさんは自身のことを話さなかったので時系列の中でも明かされるのが遅くなり結果的にミステリ仕立てのように感じてしまったけれど、そのように扱うことがよくないという主張にもとても納得した。観ていてもしかして……と思うに至れないほど、相手がトランスジェンダーであるという可能性をもって人と接したことがないんだなと自分の未熟さを感じた。異性愛者と決めつける表現にはとてもとても気をつけてきたのに。

> 「トランスジェンダーという点『だけで』悲劇になった、悲劇を背負わされている、かわいそう」という見せ方にならないように、打ち合わせの初日から最後の日まで、とにかく話し合い続けました。
https://www.cinra.net/article/202403-52hz_iktay

これだけしっかりと考えて作品が作られている、ということがまず非常によかった。
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