ろく

ある閉ざされた雪の山荘でのろくのレビュー・感想・評価

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
2.0
東野圭吾は本格者の「なれの果て」なのよ。

原作読んでます。これが出て喝采したものです。もともと第1作の「放課後」からして本格要素満載、それは「卒業」での無駄な暗号トリックで読者を置いてけぼりにし、ああ東野は「本格者」の悪い展開に収まってしまったと感じたものです(その後の本格「十字屋敷のピエロ」なんか誰が文句言おうとも断然アゲだったのよ)。でも本格だけでは飯が食えない。さらには新本格には綾辻、有栖川の二大巨頭がいる。

そう、東野は本格から「キャッチー」にスイッチしたの。「秘密」「白夜行」「流星の絆」。でも東野は本格を忘れていないんだよ。「どちらかが彼女を殺した」「ガリレオシリーズ」とキャッチーな中にしっかりと「本格」を紛れ込ませる非常に「上手い」作家なんだ。

前フリ長くなった。

全然違うじゃないか。だれだ、これ脚本書いたの。だれだこれ許したの(東野圭吾)。原作は最後、酷薄な容赦のない「結末」が待っているんだ。そしてその結末にニヤニヤが止まらなくなり、この捻じれこそ本格!と(ほんとに一部の)ミステリファンを狂喜乱舞させたんだ。僕もミステリ者の一人として狂喜したの。でもこの映画ではその酷薄が優しさにとって代わられ、そのまま「イイハナシだなー」て終わりやがる。許せん。許せんぞ。監督は……飯塚健。ああ「ヒノマルソウル」の人かぁ(納得)。なぜこんな展開にした。なぜ許した。なぜそのまま上映した。

ふ・ざ・け・る・な

見たかったのは僕らの「優しさ」をそのまま崩される展開なのに。僕らの「優しさ」がそのままレッドへリングになる展開なのに。優しければ優しいほどそのまま刃となってこっちに斬りかかってくる展開なのに。


もう一度言おう。

ふ・ざ・け・る・な

というわけで昔から本格物を愛してやまない人間としてはあまりに本格「愛」が足らないんだよーーーーーーー。あ、それを抜いて映画を見たら「これよくできた火サスやん」って感想しか出てきません。もうもうもう。

しかし東野先生よくOKしたなぁ……・

※文句ばかり書いたけど、館を上から俯瞰して観るシーンは面白い。小説で館が出てくると何度とその図を見入っていたものとしては、あれはあらたな知見。この映画で唯一「良かった」と思える瞬間である。

※原作大好きなんで評価はいつもより悪い。客観的では全くないので許してほしい。原作読んでない人には「ミステリ映画なんかこんなもんでしょ」って思わせる作品ではある。
ろく

ろく