Omizu

利休のOmizuのレビュー・感想・評価

利休(1989年製作の映画)
3.7
【1989年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
『砂の女』勅使河原宏監督が野上彌生子の小説『秀吉と利休』を映画化した作品。ベルリン映画祭フォーラム部門に出品されC.I.C.A.E.賞を受賞、キネ旬日本映画ベストテンでは第7位に選出された。

同年熊井啓監督の『千利休 本覺坊遺文』も公開され、こちらもヴェネツィア映画祭銀獅子賞受賞、キネ旬第3位となるなど評価された。

結果的にはどちらも特別好きにはなれなかったが、選ぶならこちらかな。勅使河原宏監督の芸術的センスに溢れた画面がとてもいいし、静謐な中な宿る激情のようなものを感じられる作品に仕上がっていた。

ただやっぱりしっくりこない。歴史伝記ドラマみたいなのがイマイチ刺さらない性分なんだと思う。それなら映画じゃなくてよくない?と思ってしまう。

非常によく出来た作品ではあると思う。計算され尽くしたカメラワークや画面構成は素晴らしいし、主演の三國連太郎の演技も然り。利休というキャラクターをよく理解した静かな熱い思いというのをよく表現している。

秀吉に翻弄されつつも、最後は自分の信じた道を往く利休。そのアツさ。非常に静かな映画ながらも心情描写が実に巧みであった。勅使河原作品の中では特出した作品ではないが、なかなかによく出来た作品だと思う。
Omizu

Omizu