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悪は存在しないの犬のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.0
水も仕事も上から下に流れる摂理/構造の中で、勧善懲悪から免れて悔悛したとて搾取という不均衡が足を踏み入れれば相容れることはなく静かに予想外の幕引きを迎える。これが他の監督であれば芸能事務所の人間は村の住民と少しずつ打ち解けて最終的には受け入れられて共生の流れだろうにって思うと笑える。露骨なほどに濱口メソッドの権化である大美賀均が自然と調和するように獣道を歩き、薪を割り、水を汲む。この削ぎ落とされた日常の反復とグランピング事業の説明会に於ける『もののけ姫』の猩々を彷彿とする無機質な説き伏せ。更には、薄明光線が透過する霧やトンネルの暗闇に覆われた影の濃さ、キアロスタミ的な車を介した撮影とロングショット、、こんなの面白いに決まっている。東出昌大のYouTubeを欠かさず見ている身としてはルーティンや言動、白骨化やシカの習性までリンクすることが多くて常に「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」状態。てか、なんなら演出はそのままに東出昌大バージョンを見たいくらい。
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