IMAO

青春ジャック止められるか、俺たちを2のIMAOのレビュー・感想・評価

4.5
なんて良い映画なんだ!?この映画には、若い時に経験した全てが写っている!多分現場を経験した人なら、そう感じる人も沢山いるだろう。

映画青年の井上淳一は、若松孝二の大ファン。ある日、名古屋のミニシアター・シネマスコーレの舞台挨拶で若松監督に出会い、弟子入りを志願するが…

コレはほぼ実話ベースの話ではあるが、井上監督がパンフレットで語っている通り、当初はシネマスコーレの支配人・木全純治氏を主人公に脚本を書き始めたそうだ。だが、木全氏自身の人生にあまり葛藤が見いだせない。そのためドラマが作りづらくなり、結局自身を含めた若松組の話を描くことになったそうだ。だが、その自らの視点こそがこの映画の命で、主人公を「私」にしたことで、多くの映画関係者の視点を代弁することになっていると思う。
映画や映像の現場を体験したことのある人なら、誰でも思い当たるような失敗をこの主人公はしでかすが、そうした失敗を最初は笑ってみているうちに、なんだか泣けてきた。そういえば、現場に行ってどこに立っていて良いのか分からず怒鳴られたり(今でもたまに現場行くと「そこ映り込んでます」とか注意されるけど)先輩の車を移動させていてぶつけてしまったこととかリアルに思い出したりしました。でもそういう経験があって、本当に今があるし、これは何も現場を体験していなくても誰にでも当てはまる話だと思う。
映画の中でも語られている様に「シネマ・スコーレ」のスコーレとはラテン語で「学校」の意味だそうだ。自分の映画館をそう命名した若松孝二に後進を育てたい、という思いがどれほどあったのかは不明だが、彼のところから育った映画人が今の映画界を支えているのは紛れも無い事実だ。彼自身が正に「スコーレ」だったのだ。そう考えると、今もあの映画館が存続していることは、本当に奇跡的なことだと思う。何しろ多くの映画館が廃業していった中、ビデオブームもリーマンショックもコロナも乗り越え、今も多くのインディーズ作品を上映し続けているのだから。

キャストが皆良かったが、井浦新が前作に続き若松孝二を演じている。正直、前作ではかなり無理を感じたし、本人も相当プレッシャーだったと語っているが、今回は正に「板についている」感じ。なんだか妙にハマっていて、一つの芸になっていました。

久しぶりにパンフを買いましたが、シナリオが付いているのは流石脚本家の映画です^^
IMAO

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