良くも悪くも、安心して観られる日本映画でした。
映画はいつも一人で観るのですが、今回訳あって何人かで観に行くことになり、詳しいんだったら選んでよ、と。(映画好きあるある)
考えてみると難しいもので、ミニシアター系は無理だし、「哀れなるものたち」なんてとんでもないし・・😅で、年代もバラバラだったので、この作品にしました。
そんな本作、笑いあり、涙ありでしっかり面白い作品になっていましたが、とにかくムロツヨシ度100%の映画なので、彼のキャラクターが好きか嫌いかで評価は分かれそう。
個人的にムロツヨシさんは好きな俳優です。
以前にNHKかなんかで語っていた壮絶な幼少期の話。母の顔は覚えておらず、父や姉とも離散し、祖母に育てられた子供時代。特に、両親が壮絶な夫婦喧嘩をしている間布団の中で耳をふさいでいたというのは、自分もそうだったのでとても共感できました。
ムロさんはコミュニケーションの天才でとにかく周りを明るくするイメージですが、あれは一人で生きていくために必要なスキルだったんじゃないかと思いますし、ときおり垣間見える陰の部分とのコントラストが俳優としての魅力なんだと思います。
今回主演ということでいろんなテレビに番宣で出ていたのですが、その中で、柄本明さんの劇団に研究生として通っていた話をはじめて明かしていました。
研究生の期間は短く、早々に辞めてしまったそうですが、その後売れない俳優人生で方向性が見えなくなった時に柄本明さんに手紙を書いたところ、稽古場にしばらく通わせてくれたそう。
ムロさんは柄本さんにお礼とともに『次は撮影現場でお会いできれば』 と手紙を書いたそうですが、本作でとうとう27年ぶりに共演することになったんだそうです。
シャイな柄本明さんのこと。共演シーンは多数あったものの撮影現場ではほとんど会話は無かったそうですが、出演衣装のまま二人が笑顔で並んで映っている写真を見ると、ちょっと感慨深かったです。
■ 映画について
柄本明さんとムロツヨシさんの共演は良かったですが、映画としては残念なところもありました。
今の時代、いくらなんでもっていうチープなCG(川に落ちるシーン)とか、劇伴からも昭和的な雰囲気を感じてしまい、なんだか良くも悪くも、昔ながらの日本映画だなぁ、と。(あえてそういう演出だったらごめんなさい)
また、原作からそうなのかもしれませんが、今は再評価されている徳川五代将軍綱吉のイメージが”おバカな犬公方様”のままだったり、吉良上野介の描き方も少々古い感じで、新作なのに懐かしさを感じてしまったのも事実。
ただ、討ち入りしやすいように吉良邸を郊外へ移築させたとか、一人二役のムロツヨシが演じる吉良の弟は民から評判が良かったところなんかは、コメディ要素の演出によって逆に今の時代考証と合うことになっていて面白かったです。
ムロさんは度々、日本で大人向けの上質なコメディを作りたいと言っていますが、これはなかなか難しそう。
アニメや漫画・ドラマ原作の映画、日本固有の問題(「福田村事件」や「市子」のような)を扱った映画は出てきますが、コメディはどうしてもチープな印象を受けてしまいます。
ただ今回、子供からお年寄りまで幅広く安心して観られる映画って実は少ないんだな、ということも感じたので、今後もこういった作品は定期的に作って欲しいところです。