うめまつ

マシュー・ボーン IN CINEMA/眠れる森の美女のうめまつのレビュー・感想・評価

4.8
醒めながら見る極上の夢。毎秒好き過ぎてどうして私はバレエダンサーじゃないんだろうと真剣に考えてしまうし「おいおい天才かよ。。」という演出振付衣装メイク美術が手を替え品を替え出て来るし、荘厳なゴシックロマンの様相でありつつユーモアのスパイスもたっぷりかかってて、瞬きするのも惜しいくらい端から端まで旨味しかない。原作の好きなところだけを抽出して、新たなイマジネーションをこれでもかと注ぎ込んで、膨大な手間暇をかけて練って練って練りまくって象って装飾した、謂わば捏ねくり回したはずの作品には無垢な独創性が宿っており、転生して生まれ変わった赤子のような光を纏っている。こんな魔法みたいな創作が出来るなんて、マシューボーンは変態の域に達した究極のロマンチストに違いない。

ライラック伯爵(リラの精ポジの妖精王かつヴァンパイア。え、ヴァンパイア??)の、ピンと張り詰めた弓のような、爪先まで完璧に神経の行き届いたダンスがあまりに優美過ぎて蕩けた。長い手足で空気をスライスしているかのような鮮やかさで、その残像すら溜息が出るほど美しかった。彼が出ていると目が釘付けになってしまい、全然舞台の全貌を追えないから2回観に行ったけど結果は当然同じだった。寧ろ彼を見ると心拍数の上がる身体にまでなってしまった。重課金するのでライラック伯爵のファンカムを切実に求む。

カラドック(オーロラに呪いをかけた闇の妖精カラボスの忘形見)は親の影響受け過ぎて拗らせた中二男子みたいだった。オラオラムードを漂わせながら強引にオーロラと踊ったり、半分は自分が眠らせたようなもんなのに、健気に100年待ってキスしようとして出来なくて1人で焦らしプレイしてみたり、キスできたと思ったら起きなくて憤ったり(当たり前や)、オーロラの恋人レオがいざ忍び込んだらベッドで待ってたり、でも結局起こしたいのでキスさせた後すぐレオを連れ去って自分の手柄にしたり、敵役なのに全行動が逐一面白いぞカラドッグ。結婚式の群舞は振りも楽しいし、ダンスもダイナミックで上半身のタトゥーまで魅せてくれるし、極め付けには果て方も最高だし、推せる。

天真爛漫なお転婆オーロラは身体能力が凄まじく、眠っていない間は休む間もなくずっとくるくる飛び跳ねてた。眠りながら踊るシーンの力の抜け具合と緩急のバランスも超人的。ただ私の心は闇に支配されているので、カラドッグとの結婚式での呪われた姿が一番好みではあった。死んだ目もベールも赤いチョーカーも素敵だった。オーロラを100年待つ為にヴァンパイアにまでなってしまった、一途さが桁外れな森番レオとの場面もひたすらキュート。ベンチを使ったパドドゥは恋の悦びに溢れているし、特に羽根に頬擦りする愛情表現が抜群だったので、いつか妖精と恋に堕ちた時真似しようと思った。
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