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メドゥーサ デラックスのFrapentaのレビュー・感想・評価

メドゥーサ デラックス(2022年製作の映画)
4.3
最近観た中で最もユニークな作品。
髪の毛に魅せられて頭のネジが飛んでしまった人が何人か出てきて、その狂気が他の人たちに伝染していき疑心暗鬼になっていくスリラーもの。
話としては殺人の犯人が誰か当てるよりも、その事件で浮き彫りになる「髪の毛が(精神的にも)複雑に絡みつく者たちの人生」に焦点が当てられている。前者を期待すると拍子抜けするが、後者に関しては見応えあり。


公開前なので内容にはあまり触れず製作の方に話を移す。

本作は何より本場のヘアスタイリストが製作に関わっているのが特徴。“最も独創的なヘアスタイリスト”と称されるユージン・スレイマンが担当しており、作中でも今までに観たことないようなヘアスタイルを披露してくれる(この方はレディーガガも担当したことがあるそう)。取り組む上で、全てが自分の作品と思われないように意識したそうで、多種多様な髪の芸術を垣間見ることができる。

また、事件を追っていく上でのワンショットは今作ではかなり効果的に思えた。トゥモローワールドが黎明期に台頭し、1917を契機として流行り出したと思われるワンショットだが、技術の進歩が窺えて良い。
撮影監督はロビーライアン。過去作で長回しをやっていたのか存じ上げないが、これまで観た中では上位の巧さを誇っていた。正直今作ではシーンの繋ぎ目はほとんど分からない。ワンショット故の繋ぎ目を探してしまい却ってノイズと化してしまう現象には至らず、所々に工夫がなされていたのだと推察する。そして、ワンショット以前にそもそも映像が美しいのもポイント。ロッカーで煙を吐くシーンには特にうっとり。版画のように黒い影が人を形どりつつ、流動的な煙が命を吹き込んでいる。

さらに、ヘアスタイルと共に音楽も前衛的と感じた。コンテストという奇抜な芸術が噴出してくる場と相性が良かったと思う。コアレスという方らしいが、テンポを一定にせずあえて可変的にしていくのも、掴みきれない人物や現場の状況そのものを表しているようだった。


独特の世界観に釘付けになった。
芸術作品として完成度が高く面白いのでぜひ。
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