ぶみ

悪魔の追跡 4Kデジタル・リマスター版のぶみのレビュー・感想・評価

4.0
せっかくのバカンスが台無しロードショー。

ジャック・スターレット監督、ピーター・フォンダ、ウォーレン・オーツ主演によるスリラー。
カルト集団の怪しげな儀式を目撃したことをきっかけに、謎の嫌がらせを受けることとなった二組の夫婦の姿を描く。
1975年公開の本作品、未鑑賞であったが、なぜかここにきてリマスター版がリバイバル上映されることとなり、予告編も面白そうであったため、劇場に足を運び鑑賞。
主人公となる二組の夫婦、ロジャーとケリーをフォンダとララ・パーカー、フランクとアリスをオーツとロレッタ・スウィットが演じているほか、保安官役としてR・G・アームストロングが登場。
物語は、共同でバイク工場を経営するロジャーとフランクが、休暇でスキーをするため、妻とともにキャンピングカーでコロラドへ向かう途中、河原で一泊していたところ、対岸で行われていた怪しい儀式を目撃したことから、その集団に執拗に追われる姿が描かれるのだが、冒頭、バイクのレースシーンがあったり、一泊するために立ち寄った平原でバイクで遊んだりと、やたらバイクが登場するとともに、キッチンや当時では最先端の電子レンジを完備し、「VOGUE」なるロゴが入ったトラックをベースとしたであろう大型のキャンピングカーで、荒涼とした大地を疾走する様は、70年代の成功者をイメージさせるには必要十分。
その後、キャンピングカーでコロラドへ向かうというロードムービー調で進行していくが、謎の集団に追われたり、ドライブインで必ず電話が繋がらなかったりといったホラー的な要素に加え、はたまた行く先行く先で好奇の目で見られるという、見知らぬ土地で感じるそこはかとない恐怖や閉塞感が、不穏さを煽るものとなっている。
何より、その舞台のベースとなるのは、荒涼とした大地を貫くハイウェイであり、私のベストムービーであるスティーヴン・スピルバーグ監督の1971年公開『激突!』を彷彿とさせるものであること、また、行った先々で会う人が、味方なのか、そうではないのかと疑心暗鬼になっていく姿は、前述の『激突!』や、そのオマージュがふんだんに使われている、これまた私のベストムービーの一つ、ジョナサン・モストウ監督の1997年公開『ブレーキ・ダウン』でも取り入れられている要素であることから、観ているうちに、否が応でもテンションが上がってしまった次第。
特に、終盤にあるカーチェイスは、CG夜明け前の時代だからこその実写による迫力に満ち溢れており、そんな中でも、ボンネット型のレッカー車が、結構な時間にわたって片輪走行を続ける姿は、「街の遊撃手」として名を馳せた往年の名車いすゞ・ジェミニのCM顔負けであり、そのドライビングテクニックは目を見張るもの。
『激突!』同様、素性の知れない相手に対する不安が見事に表現されており、ロードムービーをベースとして、カーアクションやホラー、スリラーが、短い尺の中にふんだんに詰め込まれているとともに、フォンダがバイクを駆る姿は、アメリカン・ニューシネマの代表作、デニス・ホッパー監督『イージー・ライダー』を思い出させてくれる良作。

クロム・ホイールか。
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