いち麦

バジーノイズのいち麦のレビュー・感想・評価

バジーノイズ(2023年製作の映画)
3.0
原作コミック未読。清澄が他人との関わり合いを避けて一人部屋に篭ってDTMにのめり込むのに特段の理由がある訳でもなさそうなので(口実に過ぎない程度の台詞はある)、単に自閉傾向な青年なのだろうと見た。
清澄の音楽に惹かれ彼を外の世界へと引き出そうとする潮の強引なアプローチに初めのうちはドン引きしたが、後に清澄が仲間との関係を作り始めると気後れして静かに身を引く姿は見ていてちょっと可哀想な気持ちになった。
清澄が言うようにSNSと配信サービスを上手く利用すれば今どき音楽なんてアマチュアでも簡単に売り出せる。彼を曲作りで消費しようとする音楽プロデューサーと、彼と共にあくまでセルフ・プロデュースで創作し発表していこうとする仲間との間の綱引きの様相を呈していく展開は如何にも今どきらしくて興味深かった。面々のその後をサラリと見せる着地も爽やかでイイ感じ。

一方で、演じた川西拓実ファンの方々には申し訳ないが、この映画の清澄にアーティストとしての個性や魅力が殆ど滲み出ていなかったのは痛い。まぁ全て打ち込みで自分の音楽世界が完結しちゃってる人…という意味でいえば正にその通りなんだが。だからこそ対照的に清澄が打ち込みで作る楽曲は唸るくらい凄いものであって欲しかった。なのにどの曲も致命的なほど陳腐(=ありきたり)で素人臭くて聴いててゲンナリしてしまった。シンセ音のエディットだけでももう少し取り組んで何とか映えあるサウンドに出来なかったか。これを聴いて「売れる」と踏む人間が出てくるのがフィクションとはいえちょっと「ないワ〜」(申し訳ない)。
ただし脇でサポートするリクのベース、ミサキのドラムがとても上手く、ひたすら2人の演奏が救い…柳俊太郎、円井わんの演奏演技もなかなか良い。やはり打ち込みよりバンドの生は良いなと思ってしまった。
いち麦

いち麦