イルーナ

スパニッシュ・アパートメントのイルーナのレビュー・感想・評価

4.0
物語の舞台はバルセロナ、しかもさまざまな国籍の学生たちが一つ屋根の下で暮らすという、私にとって夢のようなシチュエーションの映画で、ワクワクしながら観ました。

国籍の違う7人の学生が部屋をシェアする生活は、一人一人のキャラクターがしっかりと確立していてとても楽しかったです。主人公が偶然知り合う医師夫婦も然り。人間という愛すべき素材をしっかり活かし、日常の中に潜む「うんうん、あるよねこんな事!」とちょっと吹き出してしまうようなことをつまんで引っ張り出すのがとてもうまいです。

留学生のみんなの描き方は、イタリア人はいいかげん、ドイツ人は生真面目というステレオタイプなものもありましたが、フランス人の主人公は真面目そのものだったし(といっても、不倫とかやっちゃってたりするんですが…)、ベルギー人の女の子がベルギーの複雑な民族関係を語る場面があって、「これは実際に本国に行かないと分からないだろうな…」と考えました。ベルギーの民族問題はこれを観るまで知らなかったのだし…
他にも、“エラスムス計画"という交換留学制度がある(そして手続きが非常に面倒)ということ、スペインという国の中だからてっきりスペイン語が通じると思っていると、カタルーニャの学校ではカタルーニャ語の使用が義務付けられているということが判明するなど、日本に住んでいるだけではわからないような事がたくさん描かれているのが興味深かったです。

もし、この「スペインの宿」=ごちゃまぜの中に日本人が入っていたらどんな描かれかたをされるだろう?やっぱり生真面目な性格なのかな?そして、観ている間中「もし私が留学に行くことになったらどうするだろう?」ということも考えていました。毎日が新しいことの発見で、まるで冒険みたいだと思うのかもしれないし、いろいろなことにぶつかって、「人生はできの悪いコメディのようだ」と思うこともしょっちゅうなのかもしれません。やはり実際に日本の外に出て、そこの人と交流したり、体験したりしないと、その国の本当の姿が見えてこないものなんですね。様々な文化や価値観を見て、時に共感したり、時にぶつかり合う。大変なことだけれども、素晴らしい。
ラストで、自分の本当にやりたかったことを見つけ出し、「昔の自分を失望させたくない」と、真の人生に向かって“離陸"していくのも共感できました。

ちなみに、アメリことオドレイ・トトゥも主人公の恋人役で出演していますが、ほとんど彩り程度の扱いなので、そのことについてはあまり期待しないほうがいいかもしれません。
イルーナ

イルーナ