豚肉丸

HOW TO HAVE SEXの豚肉丸のレビュー・感想・評価

HOW TO HAVE SEX(2023年製作の映画)
4.0
テストが終わった少女たち三人はギリシャ行ってバカンスと青春を謳歌する。その内の二人はセックスを経験しているものの一人はセックス未経験であり、彼女はこのバカンスの最中に処女を卒業することを誓うのだが......というお話

『スプリング・ブレイカーズ』のようなパーティとアルコールが大半を占めるバカンスを描いた映画なものの、描かれる内容は『スプリング・ブレイカーズ』の対極的。クラブにセックスと性的で大人な世界を描く一方で、それらの世界が空虚であり、私たちは少し背伸びしたところで現実からは逃げられない......といった批判的な視点で描いているのが面白い。それが最も良く表れているのが中盤のある場面からの映像表現。徐々に世界が色褪せて現実的に戻っていくあの瞬間!そしてそれを象徴するような寂れた町の風景!

「セックスすること」がステータスと化したティーンエイジャーの関係性と、性的合意形成に問いを提起する。思えば主人公が「セックス」に至るまでを考えると、原因も流れも他人から強制(同調圧力)されたものであり、それを踏まえて「セックス」後にそれらの同調圧力や幻想が残酷に可視化されていくのか...

そのような内容を映像で表す試みには確かに成功していて普通に面白かったものの、結局あまりパッとせずに終わってしまった印象は受けた。中盤からも可視化されない「空虚さ」と「恐ろしさ」を映像で描くことは良かったけど、結局それだけに留まってしまった印象というか...

ただ、これから現実的にも重要になるトピックなことは間違いなく、若者の興味を惹き付けやすいバカンス映画の体裁で、「セックス」のステータス化と性的合意形成の問題を投げかけたのは見事。アンサーともなるようなオチの付け方もなかなか良かった。
豚肉丸

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