椎良

哀れなるものたちの椎良のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1


〈入水自殺を遂げた女性に、彼女のお腹にいた赤子の脳が移植される……
そうして目を覚ました"ベラ・バクスター"は数々の男性を翻弄しながら、世界や人間、そしてその奥にあるものを求め冒険へと向かう───〉

新世界を作り出す脳ミソ。

今年の劇場初鑑賞は、超期待作をドルビーアトモスにて。サーチライト×ヨルゴス・ランティモス監督、主演はエマ・ストーン。奇想天外な小説を、奇想天外な作風の監督が映画化。
映倫指定はR18+、理由は性描写だが 本編にはちょっとグロ描写もあり。アカデミー賞作品と知りながら見ると、思ったより監督色が強くて驚く。エブエブでもそうだったよな🤔

人間像というものが確立し、構成されていく過程を一から見せられる。良識なんて成果へ向かうためのひとつの様式でしかないことを体現する彼女、その生き方が力強い。そういや赤子の性別明らかにされてないような………
好奇心、性欲、社会的欲求…人間の欲の強大さと恐ろしさを中心に描く中で、男性から女性への所有欲に対する反抗も描かれており「女性から選べたら良いのに」というセリフがそれを簡潔に表している。これに関してはマックスが述べる姿勢でありたいところ。

何より語らねばならないのは、体当たりという言葉が軽く捉えられてしまうほどの性描写の多さ。フルヌードに様々なプレイ、監督らしい露悪的要素はここで垣間見える。それも含めて、エマ・ストーンは難易度の高い演技をやってのけた。手足の動作がおぼつかない時期から、学びを得て自律的に動く人間になるまでの演じ分けは必見。脇を固めるウィレム・デフォーやマーク・ラファロらが演じるキャラも独特!
撮影技法や劇中の美術・音楽も圧巻で、これだけで元が取れると感じた…!アトモスとの相性も最高。

全肯定するには若干躊躇するベラの完全勝利エンディングを眺めながら、ランティモス映画の新たな境地を悟る。しかし同時に、もっともっと想定外の展開へと連れ出して欲しかった、とも思わなくもない。
唯一無二の世界観、やはり奇妙さにかけては右に出るものがいないランティモス監督。「憐れみの3章」にも期待 !!!
椎良

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