YURINA

哀れなるものたちのYURINAのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
映画として本気度が高くて非常に素晴らしい作品。どんなテーマがあって、何を描いていて、というのを端的に言語化できないけれど、不思議な映像美と二転三転する物語にどんどん引き込まれた。

なんとなく意識高い映画のイメージを持って観たけれど、ジェンダーやフェミニズムや多様性を主軸に描いているとも思わないし、ラストは復讐のようだったけれどもそこを描きたかったわけでもない気がする。ベラがどのような経験をし、成長し、どんな選択をするのか、どんな結末を迎えるのかを黙って観ていた。

ベラは抑圧された人間などではなく、最初からずっと主体的でその瞬間の最善を選び続けた人間が知性を獲得し、より最善(かつ理性的)な選択をとれるようになっていった、というだけな気がする。

非常にファックシーンが多いけれどあとから考えて、あれは女性の性欲の在り方を非常によく描いていたのではと思う。女性の性欲はないものとして扱われたり、性欲があることが好ましくないとされることが圧倒的に多かった中で、ベラは欲に従順で奔放だった。女性の性欲がそこにきちんと存在しており、きちんと描かれていた。また女性の性欲を周囲がどう扱ってきたかもよく描かれていた。(人前で性器を触ることは社会的によくないことは大前提ではあるものの、)その行為に対して良識ある人間のすることではないと強く批判したり、愛人のように囲わたり、去勢されかけたり。ベラ自身は主体的な存在だったけれど、ベラの性欲は主体的なものではなかった気がする。

時に不穏で時に不快な音楽も、独特の色彩の衣装も舞台セットも映画の雰囲気とあっていて、というか、映画の世界観を作り上げ、押し上げていて素晴らしかった。

本当に観てよかったと思うけれど、万人ウケする作品だとも思わないので、ここまでクセの強い作品がアカデミー賞作品賞にノミネートされ、多くの人が観ている(朝イチの回で見たけれど劇場はかなり混んでた)のが不思議。

https://youtu.be/KE-lVu_An7k?si=VnvGzpSChRan6gw5
指原さんのことは全く嫌いではないけれど、指原さんナレーションCM、ずっと見当違いで驚く。女性としての生き方ってなんだ。ベラはただ生きただけで女性としての生き方をしたとは思わない。無理やりガールズエンパワーメント映画に読み替えられて、そもそもそんなテイストの作品ではないし、全ての女性に観てほしい映画です、ってなに。仮にフェミニズムの文脈だとしても、女だけの問題ではない。

>社会や人間性など、あらゆる側面における女性の自由についての物語は、人々の興味を引くものではありませんでした。ベラのセクシュアリティにまつわる自由さにおいては、少々やりすぎだと感じた人もいたと思います。
子どもの頭脳を持つ大人の女性という設定自体、人々はどう反応していいのかわかりませんでした。私たちは長い道のりを歩み、おそらく人々は特定の物事を違う見方で見るようになり、このような物語を語ることのできる道筋が開けたのだと思います。

https://eiga.com/news/20240127/6/

>ベラには羞恥心やトラウマだけでなく、生い立ちさえもありません。女性にそのような制約を強いる社会で育っていないのです。それは信じられないほど自由なことですし、それに対してできるリサーチもほとんどありませんでした。ベラは出会う男性、出会う女性、彼女がいる環境や食べ物から何かを得ます。スポンジのような存在なのです

https://forbesjapan.com/articles/detail/68745/page3
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