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瞳をとじてのnanaのネタバレレビュー・内容・結末

瞳をとじて(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

作品数が少ないわりに全作観たわけではないし、世代的にもエリセをリアルタイムで追っていたわけではありませんが、数十年ぶりの新作ともなれば気になります。

アナ・トレントとの再会は、単なるファンサービスの域を超えて私たちに何か特別な気持ちをもたらします。
リュミエール兄弟「ラ・シオタ駅への列車の到着」の引用、ドライヤー亡き今…という台詞からも、映画史と映画についての作品に思えます。

この現代において、映画館で映画を観るとはどういうことなのかをエリセは問いかけます。
もう映画に奇跡を起こすような力は残っていないのか。
映画で誰かの人生が変わることはあり得るのか。
しかし、この物語のラストで観客は奇跡のような何かを目撃します。
いや、実際は何も起こっていないのかもしれません。
フリオは何も分かっていないのかも。
それでも、きっと観た前と後では世界がどこか変わって見えるのです。

基本的には会話劇なので切り返しが多様されますが、アナの顔にぐっと寄ったり、干してあるシーツの向こうでミゲルとフリオがペンキを塗っていたり、ハッとする印象的な場面も多々。

もう戻らない時間。
しかし映画は時間をフィルムに閉じ込め、いつまでも残します。
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