ハル

関心領域のハルのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.0
例えば…SNSで特定の人物を省いたルームを作り、印象操作を行い、集団で中傷し、傍観者を気取る人々。
あるいは…クラスで起きてる壮絶なイジメに意識の壁を一つ構築し、自分たちには関係がない世界を装う群衆。
または…目の前で大怪我をした人がいても、スマホを見ながらただ通り過ぎていくデジタルの奴隷。

現代まで続くイジメや差別の根底に潜む得体のしれない気持ち悪さと歪んだ構図がここにある。
そして…“因果応報”の言葉通り、自分が当事者になったとき必ずその報いを受けるのが理。

とある家族の住む家のすぐ横に存在するアウシュビッツ収容所。
そこでは、毎日無数の人間が殺されていく。
終始鳴り響く悲鳴やみぞおちに響く重低音。
内容に関しては特筆することもなく、当時の状況がそのまま目の前で再現されているかのような、ただただ苦しいもの。
“面白さ”という意味では今年ワースト、ただ現実感が突き抜けている。
徹底的なリアリティ、評価の難しい異色作。

自分が当事者にならなければ何も気にしない。
人が苦しんでも、死んでも…ただ、生活を維持するのみ。
醜さと残忍さと無関心さをオブラートに包むことなく描ききった、“人の業”に迫る映画。

今回は監督のティーチ・イン付き上映に参加でき、色々お話を伺えた。
ドキュメンタリーの性質を強く押し出した作品ということで、定点撮影やサーモグラフィー撮影を使い、なるべくフラットに当時の環境そのままを映し出す狙い。
芝居によって世界観が変わらないよう、役者の顔に焦点をあてず、ひたすら流す。
個人的にこの演出が“映画”ではなく歴史の羅列を眺める感覚に陥ってしまい“商業映画”としてはハマれなかった。
しかし、その手法を用いた事により、数多く生み出されてきた『ホロコースト』作品の中、オリジナリティを有す“唯一無二”が誕生したのは間違いない。
性質上、賛否の大きく分かれる一作に感じました。
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