CHICORITA主任

関心領域のCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.5
ナチス政権下のドイツ、かのアウシュビッツ収容所の隣で暮らす一家の日常と、壁一枚を隔てて存在する、彼らが見て見ぬふりをするもう一つの「日常」を描く作品。

『関心領域』×TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」アフタートーク付き試写会イベントに当選し、ひと足先に鑑賞してきました。

いやー、めちゃくちゃ食らう映画でした。
見るものを安全地帯に居させてくれない、「お前もだぞ!」とブーメランを投げつけてくる。見終わって無傷ではいられない、強烈な鑑賞体験。

描くものと、あえて描かないもの、その足し引きが絶妙。
その最たるものは音響効果で、一見幸せそうな家庭の姿の向こうで常に響くゴーッという「焼却炉」の稼働音、悲鳴、銃声。そして不穏さを150%増しに底上げる、なんとも嫌〜な音楽(ほめてる)。
ホロコーストの実態をあえて映像として映さず、音に託したことで抽象度が上がり、単なる歴史物に留まらない普遍性・今日性を強烈なまでに獲得していると思います。

そう、これはかつての物語ではなく、現在の我々もまた容易く陥る「無関心」とそこから発しうる悪徳について描いた非常にアクチュアルな作品です。
パレスチナでの虐殺など、戦争や世界規模の問題はもちろん、もっと小規模で個人的な無関心にも切り込んでくる。
上映後のトークで語られていたように、本作は「歴史物」ではなく「人間」を描いた作品なのです。

色々突き刺してくる映画なので、ぜひ体調の良いときに観てほしいですが、少なくとも一度は観るべき必見の作品です。
音がとても重要なので、ぜひぜひ劇場でご覧ください。
CHICORITA主任

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