MikkoIchitani

関心領域のMikkoIchitaniのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.8
セリフや表情にはフォーカスを当てず、音響やカメラワークによって物語を察させる演出はとんでもなく斬新だった。

人間は自分自身の関心領域によって、目や耳、鼻など五感のスイッチがオンオフできてしまう都合のいい神経をしている。それはわたしの瑣末な日常においても日々感じるわけなのだけど、アウシュヴィッツの真隣で塀を隔てた豪邸に住むドイツ人家族の平穏な日々を第三者視点で見つめ、情報としての五感の要素を取り除いたり、引き出したりすることでそこにある異常さや狂気に気付かされるのだ。

インターネットによって情報のアクセス権がどこまでも拡がる現代でも、アルゴリズムなど資本主義によって統制された情報のなかでみたいものしか見なくなってしまった我々への警鐘へと繋がるような気がした。