マヒロ

枯れ葉のマヒロのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.5
(2024.9)[2]
スーパーで働くアンサと工事現場で働くホラッパは、ある日たまたま訪れたカラオケバーで出会い惹かれ合うが、シャイな二人はなかなか距離を縮めることが出来ず……というお話。

前作『希望のかなた』を最後に引退宣言をしていたカウリスマキ監督だけど、知らぬ間に復帰してカンヌに出品されていてビックリ。7年振りになるけど、無愛想な中にも優しさの詰まった相変わらずのカウリスマキ節が心地良かった。
すれ違いを描くにあたって、現代劇ではどこでも連絡の取れる携帯電話の存在が支障になるというのはよく聴く話だけど、今作では携帯の存在も示しつつ(と言ってもガラケーだけど)、そもそも連絡がとれるようになる段階にすら進めないような細かいトラブルの積み重ねで絶妙に携帯を使わせないようにしてるのがなんか面白い。

全体的に過去作っぽさが強く、特に『パラダイスの夕暮れ』とは主人公二人の設定とか話の流れが特に似ているように感じた。移民問題などを絡めた前作『希望のかなた』なんかと比べると新しさがあるわけではないが、物語のバックで流れ続けるウクライナ侵攻のラジオニュースがキモな気がしていて、政治的思惑による虐殺の続くきな臭い世界において、ほんの少しの邪気も感じさせられない純粋な愛情を抱く二人の姿は、戦争という行為に対する最も強烈な攻撃なのかなと思った。
また、それを美男美女の若者とかではなく、日銭を稼ぐのに精一杯な中年男女でやるというちょっと捻ったところに何となく“照れ”みたいなものも感じられて、そこもまたいじらしい。ラストのウィンクは、そんな照れ隠しで素っ気なくしていた作品全体が不器用ながらもこちらに歩み寄ってくれたかのようなチャーミングさがあってとても良かった。
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