ろおじぇ

落下の解剖学のろおじぇのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.6
作品紹介を読み、夫の転落死に関する謎解き、殺害容疑をかけられた妻は本当に罪を犯したのかという推理ものだと思った。

しかしこの映画は、フランスの法廷を舞台とし、紛れもなく「家族の問題」をテーマとしていた。成功した妻への嫉妬、なぜ自分だけ時間を犠牲にしないといけないのかという葛藤、息子の事故への後悔など、どの家族にも起こりうる問題が次々と出てくる。妻、母、夫、父、立場が違うと当然価値観も異なる。修復が難しい夫婦の生々しい言い争いの録音が法廷で流されるのを見るとプライバシーも何もない法廷に恐ろしさを感じた。

最後に言い渡された判決は、一つ一つの証拠を潰して出た結果ではない。むしろ息子の解釈に委ねられた形だ。まさにこれがタイトルにある解剖学なのだろうか。見る人の解剖によって解釈が異なる、そんな複雑にな要素をたくさん含んだ作品だった。
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