アカデミー賞最優秀脚本賞受賞、納得の作品だった。皆さんのレビューを読んで劇場で鑑賞したいと思っていた作品。
フランスグルノーブルの山岳地。美しい銀世界の中、作家志望の教師が自宅前で倒れていた。妻のドイツ人作家サンドラ（ザンドラ・ヒュラー）と視覚障害者の息子ダニエル、ボーダーコリー犬のスヌープと一緒に山荘で暮らしていた。事故か、自殺か、他殺か、、謎に包まれた事件の概要は、やがて妻のサンドラに容疑がかかることによって、裁判で明らかになって行く。関係者達の証言、証拠の録音などがあらわれても、それは想像の域を超えない。次第に問題を抱えた夫婦関係まで暴露され解剖されて行くヒューマンサスペンス。
妻がベストセラー作家だが、夫は挫折した作家志望。家の事、子供の事、全て押し付けられているという不満を妻にぶつけても、妻のサンドラは動じない。ザンドラ・ヒューラーの知的な美しさ、時に激しく、時に冷酷な圧巻の演技に惹き付けられる。
あの犬は何者？白目まで剥いて演技する犬を初めて観た。障害のあるダニエルを深い雪の中誘導し、しっかり寄り添う。そのタイミングやポジションがカメラワークにピッタリ収まり驚かされる。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドッグ賞を受賞。
決着が付いても真実は見えない。幼いダニエルが自分の生きる道を選んだのだろうか。観客それぞれに委ねる結末に何とも深い余韻の残る作品だった。
