ポンコツ娘萌え萌え同盟

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

3.9
この時代の劇だと蝋燭の火…灯の明かりが黄色っぽい感じの色合いや窓辺の光が登場人物の衣装や建築の内装などが雰囲気が映えると思うんすけど、そんな19世紀の世界で行われたの結果として誰も幸福にならない不毛な物語だ。

連れ去られてキリスト教に教化されていくエドガルド。ユダヤ教を信仰するユダヤ人の家族。一見不当な誘拐のような事件を皮切りに信仰、規律、宗教的価値観が幸福を傷つける。そしてジレンマに絡み合う糸こそエドガルドの生を翻弄する。

ただやはり家族をテーマの一部に組み込んでるもあり、エドガルドの父と母の面会場面の反応とそれぞれの対比含めて必見の場面だ。
何より裁判結果の場面と堅信礼が進んでいくのを受ける場面を交互に映した苦しいものがあった。

映像に負けじと劇伴の重厚さ。ただ個人的一番記憶に残る劇伴はローマ教皇領襲撃前の場面の不穏な不協和音のように響く音楽だった。

私見だが本作品との対話するならば、異なる倫理学のモデルでの対話なのでやはりキリスト側の行為は受け入れがたい。
その点では立ち位置を宗教性よりも家族にリソースを割いてるモルターラ一家の方が理解しやすい。それは宗教倫理よりも純粋な一般倫理のモデルに近いから。

ただ誰もが内的に持つ善悪の一般倫理は脆いものではないだろうか。キリスト教のましてや宗教に限った話ではない。
宗教、民族、思想、時代など応用倫理はしばしば倫理・価値を倒錯することがあるのは現代社会、情勢を見ても明らかである。解決には非常に難しい問題ではあるが。

その上で考えるならばエドガルド・モルターラは倫理の奴隷ではないだろうか。
教化することでキリスト的な宗教価値・倫理が育まれながらも、同時に被害者でもある。その重なりが最後の彼の姿にあるのではないだろうか。