俳優 役所広司の表情の微かな変化を観ているだけで、人生の機微を感じられる豊かな120分。
映画館の暗闇の中で 俳優の微かな表情の変化に 胸がツキン、としたり、スクリーンの中の人物のささやかな喜びや愉しみを 我がことのように感じ心がクスクスしたり、泣きたいような気持ちになった。
主人公が日々通う銭湯で、湯上りに団扇で涼む内に、隣で居眠りしている男性をこっそりとあおぐ様子などから、一昨年 集中してBlu-rayとDVDで観返していた小津安二郎作品のいくつかのシーンがよみがえる。ヴェンダース監督が散りばめた ひたむきで誠実、控えめなオマージュの数々も目に楽しい。
あらゆる意味でミニマルの美しさが際立つ傑作。