やむちゃ

PERFECT DAYSのやむちゃのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
備忘録
2024年3月2日 TOHOシネマズなんば別館で鑑賞。

ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演作品。

ヴェンダース作品を観るのは初めて。
昔「ベルリン・天使の詩」を絶賛して強く勧めてくれた先輩がいたが、若さゆえ逆らって観にいかなかった。
その割にリメイクとは知らずに「シティ・オブ・エンジェル」は観に行ったりしているがw

東京の公衆トイレ清掃員の日常を描いた作品。

アパート前の道を吐く箒の音で目覚め、布団を畳み、歯磨きして、植物に水をやって、作業着に着替えて、家の前の自販機で缶コーヒー(BOSSカフェオレ)を買って、軽四に乗って好きなカセットテープを聴きながら現場に向かい、丁寧に仕事をこなし、神社でお昼(サンドイッチ)を食べ、フィルムカメラで木漏れ日を撮影し、帰宅して、銭湯に行き、浅草の地下の居酒屋で軽く飲み、本を読みながら眠る…というルーティンをこなして行く主人公、平山の平凡な日々を淡々と映し出す。
一見退屈なように見えるが、わずかな出来事で心が浮かれたり、沈んだりする平山を丁寧に描写しており、観ているのが心地良くて楽しい。
また休日は休日のルーティンがあり、平日との変化を覗くのも楽しかった。

平山の人物像ははっきりと示されない(妹の登場でかなり良家の出だとわかる。また父親と断絶していることも)。かつて何があったのか知りたくなった。
平山以外の登場人物(ちょい役も含めて役者が豪華)も、みんなそれぞれ生活感、存在感があり、一人ひとりのバックボーンが知りたくなる。

平山は、風呂も冷暖房のないボロアパートに住み、スマホを持たず、音楽はカセットテープで楽しみと昭和に生きているような人物で、そのシンプルすぎる暮らし、人物像には、すごく憧れる

カセットテープから流れる音楽も魅力的。
最初に流れた英語の曲が、中盤に石川さゆりによって日本語で唄われるシーンがあるが、さすがと唸る歌唱力で痺れた。

役所広司の存在感が圧倒的で、優しさ、哀しさが入り混じった平山という人間を見事に表現していた。

布団の畳み方や、玄関前に置いたカメラ、車の鍵、小銭の並べ方などを見て、「イコライザー」のマッコールさんを思い出した。
やむちゃ

やむちゃ