Float

PERFECT DAYSのFloatのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7
色々書いたけど、よく考えたら、ヴェンダースの品とか優しさみたいなものでかろうじて保たれている作品と思ったので評価を下げました。お育ちの良さでほかのヤバいところが消臭されてるだけの仕組みと思う。

多くの人が没落貴族である平山を自分と地続きの人と考えて消費し、「こんなふうに生きられたなら」なんて愚かなコピーと同じ感想を抱き、そのわりには平山のように闘いもせず、明日も優越感と劣等感に挟まれた生活をするのだろう。

そうやって自分を善良と信じて疑わない、自分のなかの差別や汚さを見ない人びとが東京を構成し、この映画を作っているのだと暗い気持ちになる。

見た人のアクセサリーにされてしまう危うさのある作品だった。
べつにしょうもないものならアクセサリーにしていいとおもうのだが、
清貧とか徳まで消費や価値の文脈に載せてしまったら人間には何にも残らないし、あまりにもさもしい。
映画や芸術はそれを商品にしてしまわないためにあるのではないの。

今回は製作陣の日本側の人がわかってなかったか、監督がオリエンタリズムに抗えなかったのだろうと想像した。

「きれいで善良で良質なものですよ」とパッケージングされたものを与えられたとして、自分のなかに違和感があったら、それを大切に味わう人が増えてほしい。

わたしのような感想に「いい話として描いてるんだから素直に受け取れ、無粋なことをいうな」という人がいることは想像できる。

だけど、その善良さに含まれる小さな違和感を「善良なものとして描かれているから」考えずに飲み込んでしまう人が多いからこそ
今の日本社会の姿があるのではないかとすらおもう。


ジャームッシュのパターソンのがいいな。
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