さー

PERFECT DAYSのさーのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
ルーティンは強い。
子どもの頃は、毎日ちがうことをして、たくさん考えて選択することに何の躊躇いもなかった。
でも年を重ねると、「選ぶこと」「考えること」「思い出すこと」そのものが苦痛になる時がある。毎日を自分で決めた通り淡々と過ごしていけたら、どんなに楽かと願う時がある。

主人公ヒラヤマは、日常をルーティンで固く固く守っている。それでも、世界はヒラヤマに「考えること」「思い出すこと」をやめさせない。淡々と描かれ続けると思われた彼の日常には、次から次へルーティンの壁をぶち破る出来事が訪れる。

「語らないこと」は「何もなかった」を指すわけではない。ヒラヤマが語らない(語れない)過去や感情が、突如として溢れ出す瞬間、わたしはルーティンの限界を見たし、そこに悲しみよりも安堵を感じた。何もなかったわけではないのだと。

冒頭に記されるタイトル「PERFECT DAYS」が指すものは、ルーティンで守られた穏やかな日常だけではなく、どうしようもなく崩されてしまうその日常と感情を含めたものなのだと、最後にヒラヤマの表情を見つめながら感じた。
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