TAICHI

PERFECT DAYSのTAICHIのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
知っている東京だが、どこか新鮮で微笑ましい感情にさせてくれる。

箒の音から朝が始まるルーティンは一見自分を律して、使命感を持っているように感じるが些細な事象や変わらない毎日をでさえも愛おしく思う感性に自然と見ていて心揺さぶられた。

平山が空を見上げる時のあの嬉しそうな感じがなんともいい。役所さんの演技力といい、場面一つひとつの感情の表現の仕方が本当にすごい。特にそこまで驚くようなドラマは起きないが観ていてワクワクさせてくれつつ、癒しを与えてくれる。

何気ない日常を退屈と思い、日々に刺激を求めてしまうが、退屈なんてことはなく、自分次第でどんなことでも人生が彩れるような発見や学び、楽しさがあるんだと感じさせてくれた。

他者の存在で少しルーティンが崩れたりもする場面もあり、やはり1人だけでは人生は彩られるず、出会いも人生を面白くさせてくれるように感じた。

一見我々世代には逆に羨ましいというか贅沢というか、かなり現実とは程遠い生活に感じなくもない。カセットテープが特に時代の違いを感じさせてくれて、スマホやSNSなどに支配され、様々な友人関係や恋人、会社、社会、家族などいろんな事象が取り巻き、常に他人と比べたり、比べられたりして、昔よりさらに自分だけの世界ではなくなっている世の中だと思う。その現代に生きている人間としては平山の生き方は完璧とは言えるかわからないがよりそれに近いものでありつつ、平山自身も色々なことがあり、辿り着いた境地なのではないかと感じる。正直、違うレビューを読んで余裕のある金持ちが望む貧相な暮らしではないかという意見も見て、納得する自分もいたので自分自身に置き換えてみると、羨ましい生活だがそこに辿り着くには厳しいなと…

ただ平山はそんなことがありながらも彼自身の完璧な日々を送るため、いや自然と彼の感性が完璧な日々と感じさせてくれるのではないかと思う。平山自身はなんてことないと思ってるかもしれないが、第三者目線の我々からすると彼の人生はPERFECT DAYSと言ってはいいのではないだろうか。

とりあえず、2023年終わりを迎えようとしている中で最高の一本に出会えました。
大事なのは
「今度は今度、今は今」
焦らずゆっくりと時々辛くなったら空を見上げて木漏れ日を見つめてみたいと思います。
TAICHI

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