RYUYA

キリエのうたのRYUYAのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.5
映像の最先端を行きながら、濃ゆい作家性も全くブラさない岩井俊二監督の最新作。東京・北海道・大阪・宮城と、土地とともに流浪する3人と1人の物語。フジテレビ開局ウン十周年ドラマみたいなスーパー豪華キャストが入れ替わりで続々登場。役者はもちろん、お笑いさんからアーティスト、映画監督から格闘家まで、ごっちゃ混ぜの総動員。そりゃ長尺も納得です。

・やたら強調される、登場人物たちの少女漫画のキャラクターみたいな素敵な名前
・ドッジボールの外野みたいに人物の周りをグルーっと撮らえるカメラワーク
・メンヘラ製造機みたいな影のある厨二病イケメン沼らせ男の登場

といった“岩井印”をこれでもかと喰らい続ける3時間でしたが、観た映画館の音響のせいなのかな?音響がインディーズレベルにガサつく箇所が、特に新宿まわりのシーンでキツくて、クライマックスなんか、爆音すぎて鼓膜破れるかと思ったわ。音楽映画のわりには演奏シーンを途中にブツ切って次行っちゃったりが多く、聴かせる曲以外への愛がない感じがして残念だったなぁ...。路上ライブで米津から優里までガンガン歌ってんの見て、「これ許可取れたのすごいな...」とはなったけど。

映画初主演のアイナ・ジ・エンド。「歌しか歌えない」というとんでもない足枷を付けて始まったキャラだったけど、途中からは声小さいだけでけっこうハッキリ喋ってて面白かった。日頃からアイナちゃんに感じていた所作のモジモジ感とか、喋りのぎこちなさであったりが役と同化して、違和感は皆無。むしろ、いや、BiSHめっちゃ好きだからこそあえて言うんだけど、アイナちゃんが持つ「歌舞伎町の全部感」と「やったらダメな女感」が物語的にハマりまくってたなと(あくまで“感”ですよ...)。

震災のシーンがショッキングで、時間の長さとか、気分屋みたいな揺れの不規則さが、ちょっと今までにないくらいリアルだった。僕がバーで働いてた時、お客さんが『すずめの戸締まり』を「いま震災を扱うのは古い」と批判しててビールの樽ぶん投げたろかと思ったことがあったけど、うん、やっぱり古いもクソもない。こうして色んな監督が扱い続けてることは東北人として感謝しかない。
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