さー

キリエのうたのさーのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
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生まれてから今までに経験したすべての感情をフル稼働する3時間だった。作品自体は淡々とすすんでも、見る側の心境は常に揺さぶられ続け、どうしたって一言で表せるような作品ではない。手放しで良かったとも悪かったとも言えず、鑑賞中も今も、常に複数の感情がないまぜになった気持ちです。

この3時間の中には、見たことないほど美しいと感じる場面もあれば、無理すぎて離席しかけた場面もある。追体験するにはあまりにつらすぎて、涙が止まらない場面もあった。登場人物に対しては、抱きしめたいほど愛おしく感じる時もあれば、罵倒したくなるほど腹立たしい時もあった。でも、ルカが歌うシーンはいつも、聴覚以外の感覚がすべて消えてしまったかのように、歌だけが直接心に響くようだった。

今後もう一度見たいとは思わないだろうけど、それは、この初回で感じたぐちゃぐちゃで綺麗な相反する感情を、もう二度と感じられないだろうから。美しい部分も醜い部分も持ち合わせた「人生」をそのまま落とし込んだような作品だった。
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