ストレンジラヴ

首のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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「みんな、アホか?」

構想30年、北野武監督最新作。
1581年、荒木村重(演:遠藤憲一)の謀反から1年以上鎮圧に手を焼いていた織田信長(演:加瀬亮)。子に将器なしと見た信長は、羽柴秀吉(演:ビートたけし)、明智光秀(演:西島秀俊)ら家臣団の前で「最も手柄を挙げた者に跡目を譲る」と宣言し、ここに家臣団、そして徳川家康(演:小林薫)をも巻き込んだ骨肉の争いの火蓋が斬って落とされる。
もう何度も何度も創作物で描かれてきた本能寺の変〜山崎の戦いを、世界のキタノ流に料理した野心作。
戦国乱世のならわしであるため当然とはいえ、盆栽でもやっているのかというくらい文字通り首が飛ぶ。それこそもう「よくR15+で済みましたね」というレベル。
そして出てくる人物がどいつもこいつもクズとアホ。本来ならば見出しの台詞は別のものを考えていたのだが、あまりにも露骨な表現だったためやむなく別の台詞に差し替えたくらいおどろおどろしい。本作の後の出来事を描いた作品が三谷幸喜監督「清須会議」(2013)な訳だが、作り手が変わるとここまで描き方が変わるのかという好事例だろう。
世間一般に認知された人物像を基にしたテンプレ通りの創作劇なのだが、本能寺の変に至る過程や、本能寺の変での信長の末路など、新しい解釈が採用されていて非常に見応えがある。秀吉もさることながら、ジワジワきたのが徳川家康と服部半蔵(演:桐谷健太)。強かにこの泥沼の殺戮劇を切り抜けていく姿は、本作の「第三の主人公」と言っていいだろう。他にも、この時代特有の人間関係など、観るにはなかなかハードルが高く、観終わった後は確実に人間不信に陥ると思うが、そこまでしても観る価値はあると思う。いやはや、面白かった。