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キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩のharukapiのレビュー・感想・評価

3.5
1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナ)が舞台。ユダヤ人が住む母屋に店子としてウクライナ人とポーランド人の家族がやってきて、3家族が隣人となる。ウクライナ人とポーランド人の家族は歴史的背景から当初ギスギスとしていたが、音楽家一家であるウクライナ人の長女の歌声と子どもたちの交流によって親密になっていく。最初から最後まで一貫して、ウクライナ民謡である「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌う声が響き、皆に喜びを運んできてくれる歌だとウクライナ人の長女は信じている。
そんな中で第二次世界大戦が勃発。ソ連軍、ナチスドイツ軍、再びソ連軍と、6~7年に渡る長い戦争の日々の中で統治者(支配者)は変わり、その度に粛清の対象が、ポーランド人、ユダヤ人、反乱分子(政治犯)とみなされたウクライナ人、ドイツ人の残党へと変わってゆく。その中でウクライナ人の母親は残された子どもたちを引き取り懸命に守っていくが、夫を政治犯として処刑され、自身もシベリア流刑地送り、娘は政治犯の子どもというレッテルを貼られてソ連にはいらない存在だとみなされてしまう。ラストシーンは生き残れてよかったねと思う反面、唐突だったのでちょっと残念。

勝手に他民族を侵略し、他領地を統治しているにも関わらずロシア語を話せという強要や"解放のための闘い"だと主張すること、ウクライナ民謡など存在しないという嘲笑、赤軍にそまりきった共産党の教育。第二次世界大戦が終わったにも関わらず、解放などされずに新たな支配が1991年のソ連崩壊まで46年間も続き、なお現在も侵略に抵抗する戦火が繰り広げられている。現代に至っても、なぜこんなにも侵略を行おうとする思考回路になるのか。日本も過去には大東亜戦争といって西洋からの解放を謳っていたから他者のことは言えないかもしれないけど、抑圧された統治の状況に置かされる人々のことを思うと辛くなる。
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