Omizu

乾いたローマのOmizuのレビュー・感想・評価

乾いたローマ(2022年製作の映画)
3.8
【第79回ヴェネツィア映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門】
『人間の値打ち』パオロ・ヴィルズィ監督の新作。ヴェネツィア映画祭でプレミアされ、サウンドトラック賞など3冠に輝いた。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では助演女優賞(エマニュエラ・ファネリ)と視覚効果賞を受賞した。

群像劇に定評があるヴィルズィ監督らしい(と言っても『人間の値打ち』は未見だが)オールスター災害映画だった。とても面白い。

まさに「雨降って地固まる」という話。雨が降らず3年が経過したローマを舞台に、科学者や政治家、タクシー運転手、インフルエンサー、移民の青年などが織りなす群像劇。

シルヴィオ・オルランド、ヴァレリオ・マスタンドレア、モニカ・ベルッチなど豪華キャストが見もの。『タワーリング・インフェルノ』や『大地震』のような70年代ハリウッドのディザスターもののよう。

水不足に陥るイタリア、社会格差が広がり人々は分断される。干上がった川などのCGが面白く、溢れるゴキブリに慣れきっているのもおかしかった。また、それが伏線になっていたりとなかなか上手い。

別れた夫婦、憎み合う親子などが大団円を迎えるラストが気持ちいい。まるで乾いていた3年間自体が「感染症」だったかのよう。

かなりの人物が出てくるのだが、よく整理されている。混乱せずに飽きさせない。そこは流石ヴィルズィ監督というところだろう。

イタリアらしいユーモアもいいバランスで配されている。全てが丸く収まるわけもなく、取り返しのつかないこともあるのがいいね。

かなり良質の娯楽作だった。今年のイタリア映画祭では一番のお気に入り。
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