Hiroki

マディのおしごと 恋の手ほどき始めますのHirokiのレビュー・感想・評価

3.6
今作は日本では劇場未公開。
ジェニファー・ローレンスは前作がAppleTV+、前々作がNetflixという事で3作連続で基本劇場では公開されなかった。(Netflix作品は一部で限定公開はされていたが...)
ハリウッドのスターが悲しい話だけど、前作も前々作もオスカーに絡んでいたし、何よりも内容が面白かった。
では今作は?というと、がっちがちのR指定作品なんですよね。しかも有名キャストはジェニファー・ローレンスのみ。さすがにこれで映画館では厳しかったかなー。
ただ北米ではもちろん劇場公開されていて2023年の44位で約5,000万ドル(約75億円)、全世界でも45位の約8,700万ドル(約130億円)とR指定作品としてはそんなに悪くないのだけど。

しかしジェニファー・ローレンスは前作『その道の向こうに』で帰還兵の孤独というとてつもなく心揺さぶられる物語を製作/主演しておいて、次に選んだのがこれという。
振り幅どーなってるんだ?
選んだというか今回も製作兼なので自分がやりたかったのだろうけど。
そこらへんがよくわからない。
なんでジェニファー・ローレンスこれやりたかったのだろう...
クリエイターのジーン・スタプニツキーはリー・アイゼンバーグとのコンビで『グッド・ボーイズ』や数々のドラマなどをヒットさせた人物。
『グッド・ボーイズ』を観た人はわかると思うが基本は下ネタ×コメディでさらに最後にちょっと感動させるみたいな路線。
おそらくジェニファー・ローレンスもこれがやりたかったのだと思う。
しかし今回はこのちょっと感動部分が全然無くてただのお下品コメディになってしまっていた。
これはやはりリー・アイゼンバーグがいなくなったからなのだろうか...

思えばコンビが片割れになるパターンってほとんど良かった事例がない。
ダニエルズのダニエル・シャイナートが1人で撮った『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』も酷かったし、ヒャッハーシリーズのニコラ・ブナム&フィリップ・ラショーもどちらも1人になってからは酷い。
ウォシャウスキー・シスターズのラナ・ウォシャウスキーの『マトリックス レザレクションズ』は個人的には有りだけど、特に1人になった事での穴が露呈しまくっていた作品なので世間の評価は厳しい。
良かったのはコーエン・ブラザーズのジョエル・コーエン『マクベス』とファレリー・ブラザーズのピーター・ファレリー『グリーンブック』くらいか。ただこの2つもコンビ時代より良くなってるかというとまたそれは難しい。
コンビの片割れ難しい問題。

話を戻すとプロット的には「年上女性が仕事でティーンの男子を誘惑していたら本当に好きになってしまう」という世界中で今まで擦られ続けてきた展開なので、キャラクターの魅力とか途中の細かい笑いとか最後のオチとかディティールが大切になる。
上記のスタプニツキー前作『グッド・ボーイズ』はこれが秀逸で下品すぎる笑いには賛否あるとしても、ジェイコブ・トレンブレン演じた主人公をはじめどのキャラクターも魅力的だったし、何より最後のオチに思わず泣きそうになってしまった。
あの最低な下ネタからこのオチなの!というギャップにやられた。
しかし今作に関しては、下品な笑いは同等としてもジェニファー・ローレンス演じる主人公のキャラにはブレを感じる。なんとしても母親が残してくれた家を守る(いつか来るかもしれない父親からの連絡を待つ)という理由はあれ、それだけであそこまで自分勝手に振る舞うことに辟易してしまった。それが貧困のせいならばそこの掘り下げをもっとしなければいけないし、結局友達や身内にだけ優しい彼女に成長は感じられなかった。
相手役のアンドリュー・バース・フェルドマンもいわゆる“イケメンを隠したナード”という日本ドラマにあるあるのパターンでそれだけで...いやそりゃ好きになってもおかしくないぞという。
ハリウッドで作ってるのだからもっと思い切ったキャスティングでも良かった。
ラストもまー言ってしまうとかなり普通のオチ。付き合うか?付き合わないか?の2択で付き合わない方が綺麗な終わりではあるなーと思ってたらそーいう感じで終わっていった。

という事でただのお下品B級コメディになっていて、これならジェニファー・ローレンスがやる必要なかったのではないかと思った。
個人的にはレーティングが上がっている理由が海で服を盗まれるシーンだと思うので、このシーン無しでレーティングを下げてもう少しマイルドなコメディにした方が良かったような。
あのシーンたしかに私は笑えたけど、嫌悪する人も多いだろうし、何よりどーしても必要なシーンというわけでもなかったので。
ポップコーンムービーなのに家族では観れないし、ジェニファー・ローレンスファンのフェミニストからの支持も無さそうだし、シネフィルにはつまらないだろうし、ターゲットがとてつもなく狭くてなってる印象。
ただそれで撮るならスタプニツキーの必要はないので難しい所...

まー今作でジェニファー・ローレンスはストレス発散もしたと思うので次作に期待!
スタプニツキーはアイゼンバーグとのコンビでもう一回やり直した方が良いと思う。

2023-63
Hiroki

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