ペンギン侍

窓ぎわのトットちゃんのペンギン侍のレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.9
原作の大ファンで、文字通り穴が開くほど読んできた。トモエ学園ってどんな学校だろう?校長先生ってどんな人だろう?と子どもの頃想像を巡らせてきたのち、2023年にこの映画に出会えるとは思わなかった。シーンひとつひとつで泣いてしまった。

大人になったいま、小林校長先生の“教育者”としての存在感には圧倒される。私には子供はいないけれど、もしも子どもがいたのなら、校長先生がしてきたような教育を受けさせたい。肯定感を与え、あなたはそのままでいい子なんだと繰り返し言ってほしい。実際、トットちゃんの同級生のその後は先生になったり学者になったりと素晴らしいものになっているよう。もちろん結果だけが全てではないのだけど、例えば背の低い高橋くんは大学のラグビー部に進学したという話で、「小林先生のおかげで体のハンディキャップを感じたことはなかった」と言っている。そういう、人生を歩むことができているという事実が美しいのだ。

もうひとつ、原作を読みまくっていた小学生時代には大きく感じなかった“戦争”というテーマが本作には色濃く描かれていた。
男性の駅員さんがいつの間にかいなくなったり、お弁当のおかずがみるみる減っていったり、そういった日常の小さな変化で戦争の恐ろしさを伝える演出が見事だった。泰明ちゃんの葬式の後、トットちゃんがたまらず走り出した後の描写は胸が押しつぶされそうだった。国が勝手に決め勝手に始めた戦争は、関係のない人たちの未来や命を容赦なく奪っていく。
トモエ学園が燃えた時、怒りが込み上げた。あの子たちが楽しく過ごした学舎を容赦なく燃やす爆弾を、戦争を、憎むしかなかった。絶対に戦争はしてはいけない。戦争反対。
ペンギン侍

ペンギン侍