ShojiTaniguchi

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのShojiTaniguchiのレビュー・感想・評価

1.8
新感覚かつ大ヒットしたホラー映画という評判を事前に知っていたこともあり期待して観賞したが、何だか自分の感覚とは色々合わない部分が多く、うーんという読後感が残ってしまった。

監督はオーストラリアの双子兄弟のYouTuberで、この作品が長編映画デビュー作とのこと。
YouTuberといっても、日本におけるそれ (TV番組の劣化コピーや内輪受けのノリ) とは違い、映画的な演出や技術を熱心かつ実践的に研究している人気チャンネルのようで、そういう点においてはこの映画もきちんと商業映画作品として成立しており、実際に高い興収も記録していて立派だなと感じた。

肝心の物語は、SNS世代の若者達を主要登場人物としながら、若者特有のノリで得体の知れない降霊術遊びに興じるが… という設定だけれど、それ自体は割と普遍的というか、ガジェットやマクガフィンは違えど、1980年代のホラー映画などでも良く見られたホラー映画の導入とほとんど変わらない。
いわゆる無思慮な若者たちが痛い目に遭うというクリシェの流用はまだいいとしても、降霊体験をスマホでライブ中継するなどの今どきの若者らしい描かれ方も多少ありつつ、その部分は脚本全体を通すと何にも関連せずだったりで、どうにも中途半端に感じてしまった。

しいて言えば、何者でもない若者達にもある他者に認められたい欲求だったり、常に他者とつながっていたいという欲求だったりの、肥大した承認欲求が物語を動かす軸になっているのかなとも感じたが、描かれ方がすごく中途半端なので、別にそこまで深読みするほどのことでもなかったようにも思う。

何より、劇中に登場する人物のほぼ全員が人間的に不快というか…
もっと直接的に言ってしまえば、主役も含めた登場人物たちの人間性が愚か過ぎて誰にも感情移入の余地がなく、愚か者達が愚かなことをやらかして愚かな結末に突き進む話を、傍観者的な距離から見させられているような気持ちになってしまった。
映画やドラマにおいて、主役が善人だったり利発であることは必須では全くないと思うし、この映画の主役のキャラクターも悪人ということでは全くないが、それにしても共感できる部分がほとんどない点には観賞していて困ってしまった。

例え世界規模でヒットした映画であっても、自分の感性には合わない作品というものはやはりあるものだなと、あらためて感じた。
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