TakahisaHarada

AIR/エアのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
3.8
ナイキのエア・ジョーダン誕生秘話かつスポーツビジネスの1つのターニングポイントになった出来事を描いた作品。若干脚色はあれど、ソニー、フィル、ピーター、ハワード、フォーク…登場人物たちのキャラが良くて楽しい。

ソニーが家でビデオを見るシーンが「プロと素人の解像度の差が伝わる映画体験」という感じでとても印象に残った。NCAAトーナメント決勝のThe First Shotと呼ばれてるシーンらしく、普通のシュートに見えるけど何がすごいの?と思いながら繰り返される巻き戻し映像を観ていた。
その後詳細な解説があって、1年生の自分に運命を託すパスが来ると分かっていながら平然と決めたところがプロ目線ですごいというのが分かる。
最後の決め手はスタッツ等ではなく直感が大きいというのが面白いし、プロと素人の解像度の差が表現されているのもとても良い。

実際にあった出来事らしいソニーのプレゼンのシーンも良かった。
https://theriver.jp/air-vaccaro-interview1/
ジョージ・ラベリングから聞いたキング牧師の即興の逸話にならって方向転換するの良かったし(動画ショボすぎない?とは思ったけど…笑)、後出しかもしれないけどマイケル・ジョーダンのその後の人生にリンクするような言葉があって印象に残ってる。
「苦難を乗り越える意思を呼び起こせるか?」
「君は何者だ?」
「それが君の人生を決める質問だ」

1984年時点で、バッシュ市場においてナイキはコンバース、アディダスの後塵を拝する立ち位置で、どちらかと言うとランニングシューズの会社というイメージだったとか、エア・ジョーダンは当時のNBAのシューズ規定に違反していて、罰金はナイキが肩代わりしていたとか、知らないことも多くてなるほどと思いながら観ていた。
単に事実に基づくドラマとして見ても面白いけど、「過去を磨き上げて現代を映す鏡とする」的な視点で見ると、現代のブランドに対してどういうメッセージの投げかけがあるんだろう?というのは気になった。