王冠と霜月いつか

AIR/エアの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

AIR/エア(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

If you have a body, you’re an Athlete.

皆さん、Mr.T /ミスター・Tって俳優さんをご存じですか?

83年から5シーズン放送された、『特攻野郎Aチーム』という海外ドラマ…濡れ衣を着せられたベトナム帰還兵のAチームが当局に追われながら水戸黄門的に悪を懲らしめ人々を助けていくという作品です。私が高校生の頃、地上波で定期的に放送されていて楽しみに観ていました。(2010年にリーアム・ニーソン主演で映画化もされています)その時のB.A.バラカス/コングを演じていたのが、Mr.Tです。
この映画は84年の低迷していたNIKEのバスケットボール部門が如何にしてマイケル・ジョーダンと契約して大逆転を果たすか、エアジョーダンは如何にして誕生したのかというログラインですが、オープニングで84年感を表すために、レーガン元大統領やビバリーヒルズコップのエディ・マーフィー(アクセルが履いていたのはアディダスじゃ?💦)の映像が差し込まれるシークエンスの一部に、そのMr.Tが敵をぶん殴るシーンも入ります。映りませんが、そのドラマの中で彼が履いていたのはNIKEのスニーカーでした。その後、ソニーが雑誌を買うコンビニでキャラクター化したMr.Tのスナック?菓子が映ったりもします。出演作では、ロッキー3が一番有名かもしれません。因みに、ハルク・ホーガンじゃ、ありませんよ。
 ターミネーター(84年公開)でカイル・リースがデパートでパクるのもNIKEのヴァンダルですが、こちらは正式提供でないからかパクってるシーンだからか、使用許可が下りなかったのか、そのシークエンスではオミットされてますね。

NIKEのバスケットボールシューズ部門の営業担当ソニー・ヴァッカロを演じるマット・デイモンが熱かったですね。彼はどんどん行動して行きます。上司に反対されても、予算は出せないと言われても、マイケル・ジョーダンのエージェントに拒否されても。アクション!アクション!JUST Do It!でも、見た目はファッションは普通のおじさんで腹も出てるし運動もしない。しかしそのキャラクターがどう行動(アクション)するかによって、そのキャラクターの性格が浮き彫りになり、ストーリーが転がって行くので、わかりやすくて、上手い脚本だなと思いました。所謂、『プロジェクトX』系作品なので、マイケル・ジョーダンと契約出来るのか?出来ないのか?
どっちなんだい?ではなく、
どうやって契約に至ったのかを魅せるストーリーラインです。そしてとうとう禁じ手のマイケルの母親に直接会いに行っちゃう辺りが物語の転換点その壱ですね。

ソニー・ヴァッカロ/マットデイモン
フィル・ナイトCEO/ベン・アフレック
ハワード・ホワイト副社長/クリス・タッカー(ちょっと太めの似てる人かと思っていたらエンドロールで本人っ!
(゚o゚)/)
ロブ・ストラッサー/ジェイソン・ベイトマン
ピーター・ムーア:シューズデザイナー/マシュー・マー

ソニーは勿論のこと、最初は反対していたNIKEの幹部達もどんどん巻き込まれて行きます。F〇cking Crazy おじさんズが行くになっていきますw
方向は決まって、あとは、マイケル・ジョーダンが受け入れてくれれば大成功! でも、全ての決定権は、マイケルのお母さん:ドロリスにあったんですね。ソニーが自宅に押しかけた時、お父さんは人の良いおじさんでしたけれど、お母さんは流石に一筋縄ではいかないオーラを醸し出してました。そりゃあそうですよね。そこで息子の人生が決まってしまうかも知れないんですから。
ソニー達もマイケルジョーダンが活躍してNIKEのシューズを履いてくれたら物凄いビジネスに成るとはわかってはいたでしょうが、我々は結果を知っているのでよく見つけたといえますけど、未来は誰にも見通せないので、デビュー戦で膝を壊して選手生命終了の可能性だって考えられない訳ですし…契約上でその辺は保証されるのかもですが。
勿論、ライバルも強くて、CONVERSEとアディダスの当時2強(CONVERSEはその後NIKEが買収)、マイケル・ジョーダンは何故かNIKEが嫌いw、契約金の予算はほぼ同じか、NIKEが下。さて、どうする?

エア・ジョーダンの誕生秘話…もう、シューズにジョーダンとファミリーネームが冠されるのがスペシャルですね。因みに、SLAM DUNKで、桜木花道が履いていたのはエアジョーダンでしたね。その辺の件は、あっちに追記します。
 ソニーの上司ロブが提案した、デザインの良さを通す為、NBAのルールを破って発生する罰金をNIKEが払えば話題にもなるなんて、やっぱり狂ってんなと。で、それをフィル・ナイトが知らないっていうw

「9月15日、NIKEは革新的なシューズを生み出した。10月18日、NBAはこのシューズを禁止にした。だが幸運なことに、NBAはあなたたちがこのシューズを履くことは止められない」
 
兎に角、ソニーの目利きを信じて、マイケル・ジョーダン
一点張り!これは歴史上屈指の物凄い決断だったんですね。彼は後にバスケの神様になった訳ですから。

因みに、バスケ通のコンビニのレジの店員さんに、ソニーがマイケル・ジョーダンはどう?と質問した時は、ガードは要らないとか差が低すぎるとか低評価だったのに、『結果』が出てから同じ質問をすると、前から良いと思ってたと手のひらを返します。人間の評価なんてそんなものなんですね(笑) 信じられるのは結局、自分自身なんですね。個人的に印象に残ったシーンでした。

ベン・アフレックがどの程度リサーチをしたかは不明ですが、恐らく、当時のNIKEの社員で、フィル・ナイトCEOの事を知ってる方々は、爆笑だったんじゃないでしょうか?髪型とかスーツの着こなしと自分のデスクに裸足で足挙げてるとか、あんなグラサンかけてたよね~とか…完全出落ちキャラですよね。でも、ドロリスの契約上の究極の条件を前例を無視してゴーサインを出したのは歴史に残る英断でした。
特別な契約をドロリスに持ち掛けられた時、ソニーが、一旦保留にして、フィルに相談ではなく、そこで自分自身の判断で断るのは、欧米スタイルなのかな?と感じました。日本だったら、まず保留でしょ?そもそも、こんなF〇cking Crazyな話は仕事上日本では考えられないでしょうか…本田宗一郎さんくらいかな?F〇cking Crazyだったと言えるのは。

最後のジョーダンファミリーの前で行う、NIKEチームのプレゼンテーション。ここは、作戦会議から見せ場ですが、…キング牧師の有名なスピーチは後半アドリブだったと言うフリも然り…ソニーの生スピーチでの直接的な説得がクライマックスシーンです。マイケルジョーダンがその後歩む悲喜交々の歴史を予言するように熱く熱く語ります。素晴らしいシーンです。

スコアは、4.5。全てを真似しろとは言いませんが、小さな事からコツコツとが好きな国民に見習って欲しい(勿論、自分も含めて)スケールの大きい夢のある映画でした。

2023年4月28日追記

町山さんと藤谷さんの動画を観ていたら、幾つか驚く事があったので以下列記します。
・NIKEに許可は取ってないが、訴訟の話にはなってない。
・マイケル・ジョーダンさんにも許可は取ってないw
・ソニーは、その後NIKEを首になって、アディダスに転職。
・ソニーが主役になっているが、実際はロブ・ストラッサー/ジェイソン・ベイトマンが、このプロジェクトの中心人物だった。
・予告編のヴィオラ・デイヴィス台詞はアドリブ。凄いね!

なんか、色々、日本では考えられないアメリカならではの映画って感じですね。