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夜明けのすべてのTのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.8
メンタルヘルスをテーマにセルフケア、セルフラブを描いた実にZ世代的な映画だ。

Z世代とはを解説した名著、竹田ダニエル著『世界と私のA to Z』の第一章がまさにこの映画そのもの。出世や稼ぎよりも好きな仲間と好きな仕事をメンタルヘルスを大事にしながら生活したいという彼らをよく現している。

集団より個を大切にしているメンタリティであることも、主人公2人のスマホが画面によく登場することで表現されている。スマホに依存せず、現実と乖離しすぎないのもZ世代らしい。

極めつけは主人公2人の仕事を成功に導くのがアナログアイテムであることだ。これも実にZ世代的。

結論はありきたりなものだが、これこそセルフケア、セルフラブの重要な考え方で観る人をエンパワメントする良作だと思った。

【映画の良し悪しとは無関係な感想】

メンタルヘルスに難がある人の働き方はよほどの大企業でない限りなかなかに難しい。

この映画のように半端な会社からはパージされてしまう。そしてそれを助けるのは心ある善意の中小企業だ。それでいいのか。

自分も小さいながら会社を経営していて同じようにメンタルヘルスを壊した人を何人も雇用してきたが、それができたのは僕や従業員の気持ちとガッツだ。主人公2人が発作を起こしたり早退したりしているが、あのケアや仕事の補填は善意100%だ。だから心ない会社からはパージされる。

さらに言うと「心ある職場」に出会えなかった人たちはどうなるのか。そんな出会いは運でしかない。この映画の2人は運がよかっただけだ。

個人だって会社だって社会にいる彼ら全員をケアできるわけじゃない。全員を救うのは国や自治体の制度でしかでき得ない。

生活保護を受けるほどでもない、少しのケアで今すぐにでも働ける、そんな中間にいる人たちをどう救うのか。これは大事なことでこの映画からは抜け落ちている部分だ。(結論はそこをかろうじてフォローしてなくもないとは思う)

「公助でなく共助」なんて言った政治家がいるがいい加減にしろと言いたくもなる。
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