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夜明けのすべてのmoobyooのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
登場人物たちの生活背景は、総じて厳しいものなのですが、生きることを諦めないが故に自ずと寄り集まって来る細やかな温もりがもたらす先に開く道筋の余韻が深く沁みます。

常にタメ口の上白石萌音さんに対して、敬語を貫く松村北斗さんの関係性から滲み出る愛おしさは、恋愛要素を一切伴わない物語の意外性と相まって、共に精神障害を抱える者同士がお互いの負の部分を図らずも補いながら一歩一歩進んで行く過程が秀逸です。

主演二人の素晴らしさはもとより、光石研さんや渋川清彦さんの絶妙な立ち位置の味わいや、何気ないのに自転車の存在が育んでいる意味など、多くを語らず物語に静かに溶け込ませている匙加減が良い塩梅でしかありません。

『ケイコ目を澄ませて』に続き三宅唱監督が紡ぐ、厳しさと優しさの共存の中にある台詞で多くを語らなくとも、行間に隠れた多くの言葉にしない言葉が珠玉に伝わる名編です。
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