だっしゅ

ソウルメイトのだっしゅのレビュー・感想・評価

ソウルメイト(2023年製作の映画)
5.0
2回観た。最初は泣きすぎてよくわからなくなってしまったけれど、2回目冷静になって観るとまた色んな発見があり、考えさせられた。

中国版と韓国版ではフォーカスのさせ方が少し違う。中国版では2人の関係と恋愛を対比させているのに対し、韓国版では恋愛要素は抑えられかなり2人の関係にフォーカスして描かれている。
また、中国版がどこか冷たさ、寒さ、痛さ、苦しさなどが表に出ている一方、韓国版は自然の中で戯れるショットを含め暖かさや青春の儚さみたいな温度感の高いものになっている気がする。画面の色使いも韓国版は瑞々しい。

中国版はある意味、心理描写も抽象的であり、視聴者に答えを委ねる場面も少なくない。しかし韓国版は割と心の内を話してくれたり、何があったのか説明しすぎない程度に説明してくれるので、そういう意味では観やすくリメイクされたのかもしれない。

中国版のネット小説も踏襲しているが、2人をつなぐキーアイテムとして新たに「絵」を用いている。単純では無いこの話に、新たなアイテムを入れるのは難しかっただろうが、むしろ絵があるおかげで2人の関係がよりわかりやすく、深みを出しているように思う。

キムダミは、本当に表情作りが上手いと思った。ミソが途中で島に帰ってくるところや、最後に絵を見るシーンは特に気持ちの出し方が難しかっただろう。

大人になって2人で過ごした時間は本当に少ない。それでも「太陽と影は1つになれないけど影がいるから太陽は寂しくない」のように、お互いがお互いの太陽であり影であり、その存在や次に会える日を心待ちにすることが生きる希望だったんだな。

ミソはハウンの振り向いた時の眼差しが好きって答えてるんだけど、あのミソの絵はまさにそれで。劇中でお互いに向ける眼差しはやはり特別に感じる。何年経とうとも、目だけで会話できているような。だから言葉足らずになって、お互いがわからなくなったのかな。大好きだから大嫌いになるのか。

ジヌはハウンのこと全部好きって言うけれど、その全部ってミソからしたら薄っぺらい。本当の意味でハウンの全部を好きって言えるのはミソだけなんだろう。そしてミソのことを心の底から愛していると言い張れるのもハウンだけなんだろう。なんで2人の愛をみてるとこんなにも泣けてくるんだろう。

ミソは普通にハウンの結婚式を欠席しているし、ハウンはミソの恋愛もあまり知らない。恋愛や結婚はそれぞれの人生を揺るがすことかもしれないけど、2人の中ではあまり関係ないことなのかもしれない。それはお互いのもっと深い部分を既に熟知しているから、恋愛事情なんて知らなくてもいいのかも。

ミソから、絵には心を書いてもいいんだと教わる。ハウンは絵を通して自分の心と向き合う。ミソだけが知っていたハウンの夢に、ハウンが向き合う時。ミソとのわだかまりが解け、最初から心が通じあっていたことに気付いた時。あの絵を描くことこそに意味があった。全部ミソが教えてくれたこと。

あの人がいたから、あの時間があったから、今の自分でいられる。過ごした時間の長さだけじゃない、もっと深い所にある精神的な繋がりが、自分を生かしている。
だからこの先、どんな場所にいても、頻繁に会えたり連絡できたりしなくとも、また会える日を心待ちにして生きていけるってお互い知ってる。

人生の中でも大切な1本となった。
だっしゅ

だっしゅ