あまり期待せずに観たけどとてもよかった。
恋愛映画なんだろうけど、恋愛映画という感じがしなくて。
12歳で海外に移住して、作家になって、NYで一旗あげたくて…と経歴を書くとノラのほうが確かにドラマチックなんだけど、映画で切り取られる彼女は気持ちの浮き沈みもあるわけではないし、何か大きな挫折が起こるわけでもなく淡々としていて、物語としてのドラマチックさはないから、一般的にこの手のストーリーだと女性よりも男性側を主人公にするはずなのに、なんで彼女が主人公なんだろうって思いながら見ていた。
構図としては大人になりきれずうだつがあがらずなんとなく生きている男性に対し、外の世界でどんどん自分の世界を築き、結婚もし、自分よりも常に前へ前へと進んでいく彼女。それをまぶしく感じながら生きている男性側目線で描かれそうなものなんだけど。
でもラストシーンを観て、やはりこの物語の主人公は彼女であるべきなんだと思った。
少女はいつだって先に大人になる。
という単純なものかと思いきや、そうではなかったんだと、最後に思い知らされ、いつのまにか涙が出ていた。
じんと心に残る良作。
たまたまこの物語は相手が恋愛対象となる性ではあったけれど、男女ではなくても、忘れられない人、人生の折に触れて思い浮かべてしまう、縁のある人がいる人に、きっと響く物語。
あのとき選ばなかった選択肢の先に、何が起きていただろうと、一度でも考えたことがあるなら、ぜひみてほしい。
